蒲公英 〜癒しと生命力の花〜

自作短編/長編小説を発表するブログです。 たまに日記も書きます。

スレッジ・チェイサー (18) 

 轟音と共に、スレッジとミリィにのしかかっていた瓦礫が四散した。
 立ち籠める粉塵に視界を遮られつつも、ようやく立ち上がるスレッジとミリィ。
「だれが……」
 ミリィの声ではない。
「だれが弟だ。笑わせるな」
 冷たくつぶやく少年の声。
 少しずつ粉塵がおさまっていく。
 スレッジが赤毛のふたりを視認した刹那、マークの蹴りがミリィの腹に直撃した。
「きゃああ!」
 真後ろに吹っ飛ぶミリィを何者かが受け止める。
「ありが……ぎゃ」
 ミリィを受け止めたのは《パペット》だった。
「くっ、このっ」
 《パペット》に羽交い締めにされたミリィは動けないようだ。
「《パペット》もフィールドの力を使って動く。フィールド同士が干渉すれば、時間をかければフィールドを破ることだってできるだろうね」
 マークはつぶやきながら、スレッジにはほとんど視線も合わさず裏拳を放ってくる。
「お前もフィールドを……ぐっ!!」
 両手を交差させてマークの裏拳を受け止めたスレッジは、その姿勢のまま真後ろに吹っ飛ばされる。
 フィールドで身を護っているというのにかなりの衝撃だ。
 この衝撃を、ミリィは真正面から腹に受けたというのか。
「ミリィ!」
「僕は平気! お人形さんなんかにそう簡単に僕のフィールドを破らせたりしない!」
 ――ぼこっ、ぼこっ。
「うわ!」
 5体の《パペット》が、格納庫の瓦礫を割って這い出して来た。
 あろうことか5体とも、捕まっているミリィの方へと近付いてくる。
「や、来んなあっ!」
「ミリィ、今行く――」
 再び立ち上がるスレッジに、ミドルキックを放ってくるマーク。
 ガードした左腕に痛みを感じた瞬間、スレッジは確信した。
「お前も“乗りこなす者”だな! それならっ! 罪もない人を《アースシェイカー》に蹂躙させるのを止めたらどうだっ? 俺たちと一緒に」
「黙れ――!」
 マークの表情が怒りに歪む。
 さっきまでの、冷たく無表情だったマークとは別人のようだ。
「あんたこそ、こんな奴に騙されるなっ! 僕の、僕の両親を殺した異星人にっ――うう!」
「あうっ」
「うぐ――」
 マークが激昂した瞬間、3人は“共鳴”した。

 突然、脳裏に流れ込んでくるイメージ。
 白衣を着た男女。3歳か4歳くらいの赤毛の双子。そして双子を交互に抱き上げる、上等なスーツを着た人物。
 映像は、燃え上がる炎のイメージと共に暗転した。

 時間にしてものの1秒にも満たない程度だろう。
「許すものか、堂々と人間のフリをしやがって!」
 ミリィに殴りかかろうとするマークの動作は、別人のように隙だらけだった。
 スレッジはマークに背後から掴みかかり、もろとも地面に転がった。
 スレッジに馬乗りされた格好のマークは、動けなくなった。
「もったいないよ、あんた。僕のフィールドをはねのけて瓦礫から脱出できるほどの力を、みすみす異星人なんかに利用させるなんて」
「わけわかんないこと言ってるんじゃねえっ!」
 スレッジの脳裏に、ミリィとの会話が甦る。

 ――俺は、誰を信じれば良い?
 ――スレッジが信じたい人を。

「俺は孤児だからよくわからないが、お前たち兄弟だろう。なぜ信じない?」
「僕だって孤児さ。ずっと孤児院で育ってきた。あの事故で生き残ったのは僕だけだ」
「なんだって?」
 スレッジとマークの会話は中断した。
 《アースシェイカー》が歩き出したのだ。
 振り向いたスレッジは焦ったつぶやきを漏らす。
「やばい! 兵士たちを踏み潰す気だ!」

「あああ!」
 ミリィの悲鳴。
「しまっ――」
 注意を逸らしたスレッジを、マークは蹴り飛ばした。
 再び吹っ飛ばされつつ、スレッジはミリィの方を見た。
 ――フィールドを破られたのかっ!?
 6体の《パペット》に取り囲まれたミリィは、左腕を怪我していた。
「うおおおおお!!」
 地面を転がり、片膝をついて上体だけを起こしたスレッジは、鋭い三白眼で《パペット》どもを睨み付け集中しはじめた。
「だから、騙されるなって言うんだっ!」
 マークに側頭部を蹴られたが、スレッジは蹴られる位置を予測していた。
 スレッジの側頭部に分厚く集まったフィールドは、マークの蹴りを跳ね返した。
「なにっ!?」
 スレッジはその姿勢のまま、側頭部のフィールドを《パペット》どもにぶつけた。
 金属同士がぶつかる高い音が響き、5体の《パペット》がばらばらになって崩れ落ちた。
 ミリィの背後にいる1体は、相変わらずミリィを羽交い締めにしている。
「いつまでも調子に乗ってんじゃ……なーいっ!」
 ミリィは自力で《パペット》を投げ飛ばした。
 たまたま目の前に落下した《パペット》を、マークが蹴り飛ばす。
「どけっ!」
 たった今スレッジのフィールドに跳ね返された右足を《パペット》に叩き込んだマークは、しかし苦痛に呻いた。
「ぐあっ!」
 《パペット》の腕に脛を切り裂かれた。
「僕のフィールドを中和したと……言うのか」
 スレッジの分厚いフィールドを蹴ったことで、マークの足の部分のフィールドが消えかけていたようだ。
 自分の脛に視線を落としたマークは絶句した。
「!」
 脛から流れ落ちる血液――血であるはずの液体は、鮮やかな緑色をしていた。

 


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( 2008/07/05 01:12 ) Category スレッジ・チェイサー | TB(0) | CM(1)

【日記】おわんね(^^; 

書き始める前は、全3話だと抜かしておりました。
「スレッジ・チェイサー」の件です。
でも、1話目を書いた時は、主人公と、彼がエアバイクに乗ること以外の設定はお飾りのようなものに過ぎなかったんです。
1話目を書き終えた時にようやくプロットを立てまして。

この展開なら10話かな?
と思っていたのが少し増え。
15話かな?
と思っていたのが少し増え。
絶対20話になんてならないですからー。
と言っていたことまで寝言でしたすみません。

ええと。18話が書き上がりまして。
日付がかわったころにアップできそうです。
18話含めてあと3話。まとまるかなぁ(^^;
なぜ毎回増えてしまうー。
つい書きすぎてしまうのはアマチュアだから。
うーんうーん。困ったものですねぇ(他人事)


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( 2008/07/04 20:54 ) Category 日記/世迷い言 | TB(0) | CM(5)

スレッジ・チェイサー (17) 

 アイクの車のタイヤはオンロード用だ。
 地面には大きな穴が穿たれている。先ほど、陸軍の部隊がスレッジたちに投げつけた手榴弾のせいだ。その穴にタイヤがはまり、スタックしてしまったのだ。
「くそ、動かん!」
 アイクが毒づくのと、スレッジのバイクが爆発するのが同時だった。
 轟音とともに車の左手に巨大な光芒が広がる。ゲイリーは窓に張り付いた。
「スレッジ!」
 ――あいつ、ちゃんとレバーを引いただろうか。
 思わず叫ぶゲイリーを、カナは少し驚いた顔で見つめる。
「知り合いなの、ブース?」
 炎上するバイクから目を離さないゲイリーは、七色に光る輝きを確認すると、ようやく安心したようにカナを振り向いた。
「ああ、今日知り合いになったばかりだがな……」
「話に割り込んで悪いが、後ろでドンパチが始まってる。車を捨てて逃げるぞ!」
 アイクに頷いて、ゲイリーとカナは車外に出た。
 続いて降りてきたマークは、何を思ったかそのまま爆発したバイク目がけて走っていく。
「マーク! どこ行くんだっ!?」
「アイク! あなたはノイルさんたちを座標0・0・0の北側へっ! 《アースシェイカー》は北へは行かない! 僕には僕の仕事があるっ!」
 一旦足を止め、振り向いたマークが言い終えた直後、《アースシェイカー》が立ち上がった。

 ――グワアオオオ!

「な――!!」
 《アースシェイカー》については誰からも一言も聞かされていなかったカナだけが絶句し、立ちつくしている。
「逃げるぞ、カナ!」
 ゲイリーに手を引かれ、カナは北へと走り出した。
 それを横目に見つつ、アイクはマークを追うべきかどうか迷った。
「マークが何をする気か知らんが、俺がいても足手まとい……だな。それに俺は依頼主のとこにブースを連れて行かなきゃならん……」
 ゲイリーたちを追って走ろうとしたアイクは、後頭部に硬い物を押し付けられて硬直した。この感触は銃だ。
「両手を頭の後ろで組んでもらおうか」
 女の声だ。
 アイクは言われたとおりにするふりをして――、突如身体を反転させた。
 女は慌ててアイクの動きに対応しようとする。
 アイクは銃を持つ敵の腕の細さにほくそ笑み、銃を叩き落とすべくその手首に手刀を叩き込む。
 しかしアイクの反撃は、そこで途切れた。
 手首を押さえてうずくまってしまったのだ。
「ぐお、なんだこの痺れは……。昨夜の奴と同じ……」
「残念だったな。個人用防御フィールドを殴ったのさ、貴様は」
 女――ユキが携行している個人用フィールドと同じ物を、昨夜はスービィが使っていたのである。
 うずくまったアイクの首筋を、ユキは容赦なく蹴り上げた。
 声も出せず気絶したアイク。
「おとなしくそこで寝ていれば《アースシェイカー》のオペレータからは貴様の姿は見えまい。貴様がよほど運が悪い奴でない限り……、生き残れるさ」
 カナを追うべく走り出そうとしたユキだったが、彼女はその場に凍りついた。
 何者かが彼女のこめかみに銃を押し付けたのだ。
 個人用フィールドの持続時間はごく短い。すでに効果は切れている。
「残念ですが少尉、そこまでです」
 その声を聞き、ユキは唇をきつく噛んだ。
「きさ……ま」
 切れた唇から出血し、顎に赤い筋を引いた。
「申し訳ありませんが任務ですので」
 兵士はユキを後ろ手に回させると、彼女の両手首に手錠をかけた。
「座標0・0・0までご同行願います」
 兵士は無線機を操作した。
「アルファ4。アルファ6です。特例事項が発生しました」
 兵士のコードはアルファ6。アイクの車載カメラに向かって敬礼している横顔は、陸軍情報部におけるユキの部下、マーチン・デービス上等兵だった。

*      *      *


 いきなり天蓋が崩れるとは予想外だ。スレッジとミリィは瓦礫の下敷きとなってしまった。
 身に纏うフィールドのお陰で、身体能力は飛躍的にアップしている。現にふたりとも外傷は全く無いし、痛みを感じる部位もない。
 しかし、フィールドの力をどう使ってみても、瓦礫がびくともしないのだ。これでは格納庫から脱出できない。
「ミリィ! お前は動けるか?」
「スレッジも動けないの? 僕もダメ」
 不気味なことに、スレッジとミリィの居る場所以外からもごそごそ音がしている。
 そんなことより、《アースシェイカー》が立ち上がっているのが瓦礫の隙間から見える。
「くっそ。あいつを止めに来たってのに――」
 焦りは身に纏うフィールドに乱れを生み、のしかかる瓦礫の重みが増す。
「レースと同じか。焦ったら負けだな」
 スレッジは目を閉じ、集中した。
 閉じた目をゆっくりと開けながら、ミリィに告げる。
「いるぜ。俺たちを止めている奴が」
 スレッジは見た。崩れてしまった格納庫の外に立ち、《アースシェイカー》には目もくれずこちらを睨み付けている人物を。
「さっきまで気付かなかった。瓦礫の隙間から外が見えるじゃないか」
「僕には見えないよ。多分、スレッジはフィールドのエネルギーで透視しているんだ」
 ――んなバカな。
 そう言おうと、ミリィの声の方を振り向いたスレッジは息を呑んだ。
 瓦礫に囲まれ、スレッジと同じように俯伏せているミリィが見えるのだ。集中する前まではふたりの間には確かに瓦礫があった。いや、今もある。
 ミリィが聞いてきた。
「ねえ、外にいるのはどんな人?」
 スレッジは再び集中した。すると、見えていた瓦礫の外の景色や、隣で俯伏せているはずのミリィが見えなくなり、スレッジの視界は瓦礫で埋め尽くされる。
 スレッジは頭の中に瓦礫を取り除くイメージを思い浮かべながらミリィに答えた。
「ミリィと同じくらいの年格好。男だ。赤毛で――」
「弟だ。多分マークだよ」
「似てねえな。外にいる奴、随分目付き悪かったぞ」
「うはは。スレッジ、人のこと言えないよっ」
 ――よし、いける。
「ミリィ、出られそうだぞ」
 スレッジが俯せている場所を中心に、虹色に輝く球体が出現した。
 最初は等身大の球体だったが、やがて《アースシェイカー》に匹敵する大きさまで膨れ上がった。
「おおおお!!」

 ――バリバリバリ!

 閃光とともに、落雷のそれにも似た轟音が響き渡る。
 さしもの《アースシェイカー》がぐらつき片膝をつくと同時に、一帯は土埃と瓦礫の粉塵が立ち籠め視界が利かなくなった。

 


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( 2008/07/04 18:15 ) Category スレッジ・チェイサー | TB(0) | CM(0)

【日記】ほりっくオワタ 

別にどうでもいいんだけどねw
まあ、あんなもんか。
原作……というか、CLAMPさんの他の作品自体よく知らないんだけどさ。
立ち読みしたところ、まだ連載続いてるみたいだよねぇ。
今回の「継」シリーズ、小羽ちゃんとの絡みがもっとあってもよかったんぢゃないの?
どうせまた、続編作るんだろうな。いや知らないけど。

さぁて。
もう、Nobody Knows 聴かなくなるかもっ(笑)


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( 2008/07/04 12:34 ) Category 日記/世迷い言 | TB(0) | CM(0)

スレッジ・チェイサー (16) 

「敵は生きている! アルファ4! 格納庫内に《P》を突入させろ!」
 本作戦において陣頭指揮を執るのはアルファ4であり、ペイジ中佐は言わばオブザーバ的な立場である。ただし不測の事態が発生した場合、その内容によっては特例事項が適用され、ペイジ中佐の命令が優先される。
「了解! ベータ3、応答せよ。こちらアルファ4。《P》隊・D小隊起動。目標、《E》格納庫! これは特例事項である。繰り返す、これは特例事項である!」
 別のモニターが、D小隊――起きあがる6体の《パペット》を映した。モニターが映す範囲だけでも、D小隊の背後にはそれに倍する《パペット》が横たわっているのが見える。
「土壇場で邪魔をするか……。だが、好きにはさせんぞ」
 ペイジ中佐は落ち着きを取り戻し、自信たっぷりに言い放つ。何しろ、たった今起動した《パペット》はデモンストレーション用に戦闘機動に重点をおいた特別仕様なのだ。身体を構成する部品もゴミやガラクタの類ではなく、材料工学の専門チームが開発した特殊な金属やセラミックがふんだんに使われている。
 整列した《パペット》たちはジャンプを繰り返し、《アースシェイカー》の格納庫へと向かう。やがて、予備のカメラからの映像を受け取るモニターに《パペット》たちが集まってくる様子が映る。ようやくペイジ中佐の口元に歪んだ笑みが戻った。
 6体の《パペット》たちが格納庫の中へと入っていく。
 現在時刻15:00ちょうど。

 ――グワアオオオ!

 《アースシェイカー》の各関節に取り付けられたリモートユニットが、魔物の咆吼を思わせる大音響を轟かせる。その音は、分厚い装甲で防音されているはずの装甲車の中にまで届いた。
 再び大音響。
 今度は咆吼ではない。偽装した天蓋が崩れる音だ。
 《アースシェイカー》が天蓋を破壊して立ち上がったのだ。
 いや、正確には、土中から岩を割って地表に出現する巨人を演出するため、天蓋にはあらかじめ炸薬が仕掛けられていて、崩れやすくしてあったのである。
 いよいよ本番だ。ここからの約40分間で全てが決まる。
 しかし、なかなか歩き出そうとしない《アースシェイカー》。リモートユニットの故障を疑いだしたペイジ中佐は、アルファ4に調査の指示を出そうとしたが――
「ガンマ1より入電、ガンマ隊全滅! イオタ1を追跡してきた未確認部隊、座標0・0・0に接近中!」
 想定外だ。微かに眉をひそめるペイジ中佐の様子を見て、アルファ4は半ば報告のつもりで提案する。
「《P》隊・C小隊を投入します」
「いや。デルタ隊を投入しろ。未確認部隊と接触させた上で《E》で蹴散らす」
「……。り、了解」
 アルファ4が見せた一瞬の逡巡を、ペイジ中佐は鼻で笑って黙殺した。
「デルタ1。アルファ4だ。ガンマ隊が未確認部隊と交戦、全滅した。未確認部隊を殲滅せよ。これは特例事項である。繰り返す――」
 アルファ4はペイジ中佐から見えない位置で拳を握る。ペイジ中佐の指示とは言え、たった今自分は、行けば確実に命を落とす場所へ部下たちを送り込んだのだ。
 《アースシェイカー》の猛威による多くの犠牲。そこに現れた《パペット》による鮮やかな《アースシェイカー》退治。その演出効果は、さぞかし《パペット》の商品価値を高めることだろう。
「街も破壊する予定だったが、そちらは少し控え目にしても良さそうだな。街をあまり酷く破壊すると、後で陸軍の無能を叩かれかねん」
 ペイジ中佐にとって、自分が管轄する陸軍兵士の犠牲は格好の人身御供というわけだ。
 しかも、早耳の諜報組織を擁する諸外国のうち何か国かは、すでに《パペット》開発完了の情報を入手しており、非公式に購入を打診してきている。今回の演出が上手くいけば、こちらの言い値で売り捌くのも夢じゃない。
 《アースシェイカー》が格納庫の外へ1歩を踏み出した。どうやらリモートユニットの件は杞憂だったようだ。
「ふん。これより後は、特例事項の必要なくスムーズに作戦が進行することを願いたいものだな」
 ペイジ中佐がつぶやいた途端、装甲車の無線が緊急入電を告げる。アルファ4が応答した。
「アルファ6。アルファ4だ。特例事項だと!? ふざけるな、アルファ1はここにおられる! ――まだ言うか! 作戦中だ、軍法会議ものだぞっ!」
 アルファ4は必要以上にぴりぴりしている。ペイジ中佐は口元を歪めて笑いつつ、アルファ4の肩に手を置いた。
「代われ」
「は? はっ!」
 アルファ4は戸惑いつつ、通信機をペイジ中佐に近づけた。
「アルファ6。アルファ1だ。――ふむ、ご苦労。連れてこい。以上だ」
 モニター群を振り向いたペイジ中佐は、アイクの車に搭載されたカメラの映像を確認する。そこにはカメラに向かって敬礼する下士官が映っている。彼がアルファ6だ。
 通信を切ったペイジ中佐に棘のある視線を向け、アルファ4は努めて冷静に訊ねる。
「申し上げにくいのですが、今は作戦中です。指示・命令系統を滞らせないためにも、もし本件の他に併行して進行中の極秘任務があれば、差し支えなければ伺っておきたいのですが」
「すまんな、アルファ4。本件は想定外の突発事項だ。向こうが勝手に尻尾を出してくれたお陰で、思わぬネズミ取りに成功したのだよ」
 機嫌良く答えるペイジ中佐には、部下に詫びる気持ちなど微塵もなかった。

*      *      *


 スービィがスレッジたちに手渡した防御フィールド発生装置と同じ物を、ユキたちも装備している。実は、それはユキが本来所属している部隊にのみ制式採用されている装備なのだ。車載タイプは連続運用時間60分を誇る。これを、いかなるコネクションによってスービィが手に入れたのかは謎である。
 中央情報局――陸海空軍の情報部を統括する国家機関。ユキの本当の肩書は、中央情報局特務小隊に所属する中尉である。
 ハイスクール卒業と同時に特務小隊に入隊した彼女は、士官学校に在籍する傍ら数多の任務をこなしてきた。士官学校卒業と同時に陸軍情報部に入隊したのは偽装であり、以前から武器商人たるクリント重工との間で黒い噂の絶えないペイジ中佐を探るため、ユキに課せられた任務だったのである。
 ペイジ孤児院の運営という社会福祉事業を行い、政財界の要人たちにも多くのコネクションを持つペイジ中佐は、陸軍の階級とは別に社会的な立場を確立しており、中央情報局と言えどもおいそれと手を出せずにいたのだ。

 スービィに連絡を入れていたユキは、爆発音を耳にした。
 思わずそちらを見やると、シグマことスレッジのエアバイクが爆発しているのが視界に入った。
「アルファ2! シグマが――、シグマが爆発した!」
 だが、彼女らはそちらに構ってはいられなかった。敵戦力と遭遇したのだ。
 ユキが指示を飛ばす。
「ロケット弾、および対戦車バルカンの使用を許可する。こんな足場の悪い場所で戦闘が膠着状態に陥ったら巨人の餌食だっ!」
 アイクたちは、こちらから視認できる場所で立ち往生している。タイヤが地面の穴にはまったようだ。

 ――グワアオオオ!

 《アースシェイカー》の巨体が岩の天蓋を割って姿を現す。
 2本の腕と2本足を備えたその姿は、人の姿を模した巨大ロボットのように思えなくもない。しかし岩のようにゴツゴツとした身体の表面はロボットと言うよりは伝説の魔獣や怪獣を思わせる禍々しさだ。関節を伸ばし地面に垂直に直立した巨人の背丈は、目測で17メートルはありそうだった。
 こちらへ1歩を踏み出す巨人。スービィからの情報により、ユキは巨人が遠隔操作で操られていることを知っている。そうである以上、巨人の目的は明白だ。
 早々に戦闘を切り上げ、敵の懐へ――ペイジ中佐が陣取る座標0・0・0を目指さねばならない。
 防御力で勝る特殊部隊が、ロケット弾と対戦車バルカンでの攻撃を開始した。その強烈な火力にさらされ、陸軍側の迎撃部隊は5分と保たず全滅した。
「アルファ5! 座標0・0・0を目指せ。私はオメガたちをピックアップする。私を待つ必要はない」
「了解。アルファ3、ご無事で!」
 ユキは個人用防御フィールドを制服の内側に装備すると、車を降りてアイクたちが立ち往生ちしている場所へと走っていった。

(17)に続く



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( 2008/07/03 23:02 ) Category スレッジ・チェイサー | TB(0) | CM(4)
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