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  • 「あのバカが。見送りにも来ねえで……」 小さくなっていく飛行機を見えなくなるまで見送りながら、俺はひとりごちた。 見送りが済んだら手持ち無沙汰になった。用が済んだのだからこれ以上空港にいる意味はない。 だが、今日の俺はなんとなく別れの余韻に浸っていた。 ――!! 突然、首筋に冷たいものが押し当てられた。 驚いて振り向いた俺の目の前に缶ビールを差し出し、そいつは話しかけてきた。「らしくねえな」 奴だ。来... 続きを読む
  • 好きなものと宝物の区別もできなかった小さい頃、ビー玉やどんぐり、果ては変哲のない石ころまでもがコレクションの対象となり、部屋の片隅にはいつもゴミと見分けのつかないガラクタが鎮座していた。しかし、2種類のコレクションが同時に鎮座することはなかった。今思えば、興味の移ろいやすい子どもの隙をつき、母親がうまく片付けていたのだろう。そんなある日、母親が言った。「お父さんがお仕事する場所が変わったの。小学校... 続きを読む
  • 全てにおいて完璧なものをすでに持っている人は、夢など見るのだろうか。「夢」の対義語が、もし「現実」なのだとしたら……。夢のような現実の中に暮らす人にとって、最早夢など必要ないということか。何も持っていない俺は、そりゃ夢はあるけれども。「夢」の対義語、本当は「絶望」なのだとしたら……。俺にとっては「現実」≒「絶望」ってことか?やめたやめた。こんなこと考えだしたら寝られねえ。クラスの中に、頭脳明晰(成績優... 続きを読む
  •  1LDKで家賃5万5千円。築20年という古さが微妙だが、大家がしっかりした人なのできちんと改装済みの物件だ。首都圏と較べれば安いのは間違いない。 彼女と相談し、お互いの職場にも近いという立地条件の良さが決め手となって契約した。 先月まで、狭いと感じていたこの部屋。 今月からは、広い。 そして、寒い。 もうすぐ初夏を迎えるというのに、まるで冬に逆戻りしたようだ。 ここが落ち着かない広さを感じる部屋となって... 続きを読む
  •  去年の夏、金魚すくいで手に入れた金魚を水槽に入れ、出窓に置いた。 全部で六匹いた金魚は全部死んでしまったが、中三になった俺は、今年は夏祭りに行くつもりはない。 塾で志望校への合格診断をしたところ、俺は合格ボーダーラインなのだ。みんなが遊んでいる時間こそ、自分の勉強時間に充てないと志望校に合格できない。 金魚すくいでゲットした金魚は全部で六匹だ。金魚を飼うにあたっては、水槽の底に敷く砂利やプラスチ... 続きを読む
  •  振り抜く左腕から矢のような速球が繰り出される。 キャッチャーミットから響く音は、恐らく間近で聞くと物凄い音量に違いない。 三塁側応援席の後ろの方にいる俺たちのところまで、小気味の良い音が届いた。 未だ衰えぬ剛速球。もう九回だというのに、素晴らしいスタミナだ。「凄いじゃないか、あの一年坊主。球威が落ちてない」「豪腕ピッチャーだ。充分褒められるべき内容だがな。欲を言えば――」 感心して呟く俺は、俺たち... 続きを読む
  • 予定のひとつめ、うさこさんへの1000hitキリ番のお礼にかえて、うさこさんが執筆されている作品のオマージュを発表させていただきます(1話完結)ラヴィくんを主人公とした「翼」シリーズに最上級の敬意を捧げます。追記に本編を置いてあります。ああああ。まだまだだ、私……orz『怪盗ラヴィ』... 続きを読む
  • 当ブログ10000ヒット記念。お待たせしました m(_ _)m愛音さんリクエストの短篇です。愛音さんからいただいたお題は、愛音さんを主人公にしたせつない学園恋愛ものです。学園ものなのに、学校そのものの描写がほとんどないという(^^;こ、こんなんで納得してもらえるんだろうか(どきどき)追記から、どうぞっ。夕映えと日焼けの頃... 続きを読む
  • 窓から差し込む朝日。その心地よい眩しさ。ソファに背を預けて安らかに寝入っている。それはとても自然な景色。朝日より眩しい見飽きぬ景色。その白さに魅せられて同じことをしてしまう。純白の輝きが似合う君だけど……もうそろそろ僕の色に染めてもいいよね。僕は後ろから近付いて、君の肩に手を置いた。「ん……」まだ早い時間だ。起きなくていいよ。僕はゆっくり両腕で君の肩を包み込み君のうなじに頬を寄せる。「え……? キースな... 続きを読む
  •  未練の言葉はのどに痞え、吐き出すことができない。「さようなら」 ようやくしぼりだしたひとことは、彼女の最後の言葉と全く同じもの。単なるおうむ返し。最後まで言わずに済ませようと思っていたのに。 埋まらない溝。原因を作ったのは俺。「きみが好きだ。やり直そう」 もう何度も言った言葉。もう二度と、音として吐き出すことができない。いや、たとえ吐き出すことができたとしても……。 それはきっと、立ち昇る煙に等し... 続きを読む
  •  夕暮れの陽光を背負う馬車が、進行方向に影を長く延ばしている。 今は収穫祭が終わり、冬の到来を控えて町の活気も一段落する季節。国境最北端にあたるこの地方は特に寒く、馬車を引く馬の吐く息が白い。 その馬車のキャビンの中、金髪をポンパドールに結い上げた女性がゆったりと揺られていた。彼女は、やや控え目に金糸を施した、豪華というより瀟洒なドレスに身を包んでいる。 ほんのりと化粧を施しているが、あどけなさの... 続きを読む
  •  質の悪い舗装のせいで、路面のそこかしこに窪みができている。そこに溜まった水溜まりが、まばらな波紋で揺れはじめた。秋の長雨、降ったり止んだり。 今のボクには、そぼ降る雨に風情を感じる余裕はない。どんよりとした空模様と同じく、ただ侘びしさだけが空しく募る。「!」 ふと、頭上の雨音が大きくなる。雨滴が弾ける音に空を仰ぐと、鮮やかな水色が目に飛び込んだ。差し掛けられた傘が、冷たい雫を遮ってくれている。 ... 続きを読む
  • 尖った言葉は簡単に相手を傷つける。それでも、毒を吐かなければ精神の平衡を保てないことも有り得ることを、私は知っている。下手な慰めや励ましは、却って相手をいらつかせたり追い詰めたりすることも。一番厄介なのは仲間意識だ。仲間意識には温度差がつきものなのだ。特に、押し付けの善意ほど鬱陶しいものはないだろう。知識として知っていても、いざという時に実践できなければ無意味だ。この手紙はあなたに届くことはない。... 続きを読む
  •  冬が近いせいだろう。満天の星々は見上げるあたしを吸い込むかのように煌めく。 星座のことはよく知らないので、頭の中で適当につないでみた。「オネコ座ね。ちょっとデブ猫になっちゃった。ふふっ」 身を切る寒さの中、星座は光の尾を延ばしてお互いにしっかりつながった。清冽な滝のような光の奔流は、やがて地上へと降り注ぎ――「は。……え? いや、なに? え、えーっ!?」 あたしが思い描いた星座「オネコ座」が、あたしの... 続きを読む
  •  心地よい振動が眠気を誘う。 ふと、振動が止まる。冷気に頬を撫でられ目を開けた。「次か。ぎりぎり今日中だな」 窓の外に見るともなく目を向ける。車内の灯りは、下りきった夜のとばりをこじ開けるには至らない。対向側、上りの線路がうすぼんやりと見えるだけだ。「あ」 白いものが視界を過ぎる。曇った窓を掌で拭いた。 大きな牡丹雪だ。見る間に雪片が視界を埋めつくす。「ホワイトクリスマス、か」 ドアが閉まり、俺を... 続きを読む
  • 参加中のFC2コミュニティ「物語は素晴らしい!」にて、管理人であり私のブロともでもある神楽崎 ゆうさんがステキな企画を開催なさっています。【秋企画】 Autumn Story 【お題物語】私も参加させていただきます(^^)【以下、コピペ】秋といえば「読書の秋」───そう、「物語の秋」!!!ということで、管理人主催でコミュニティ初の【企画物語】(お題小説)をやろうと思います♪● テーマ ● 「  秋  」※「秋」にちなん... 続きを読む
  • 前回のお話:星に願いを 今年は秋が来ないのではないかと思うほど残暑が長く続いた。それでも蝉の声が聞かれなくなり、それに気づいた途端ずいぶん涼しくなった。 街中では、コート姿のサラリーマンやOLが歩く姿もちらほら見かけるようになり、吐く息が白くなる季節がやってきた。 オネコ座、そろそろ見える頃かしら。 寝る前にベランダに出て、夜空を見上げる。雨降りの日以外のあたしの日課となっていた。「あったあった、デ... 続きを読む
  • お待たせしました!当ブログ22222ヒットキリ番リクエスト、第2弾!同士を待つ様からのリクエストです。同士を待つ様の作品「如月の宝玉」の世界を、拙作「ナジア・ハンター」のメインキャラが少しだけお邪魔するという形で。リスペクトする作品の世界観を壊してしまいそうでドキドキです。両作品の予備知識については、ないよりもあった方が楽しめるかとは思いますが、知らなくても楽しんでいただけるといいな……と思いつつ書... 続きを読む
  • 同じ内容の告知、3回目です。現在私は、桜庭春人様(小説家になろう:桜庭春人様のページ)による企画、candy storeに参加しています。甘いお菓子=素敵面白い小説=素敵だったらお菓子が出てくる小説を書けばいいじゃない!という企画です。アクティブなメンバーは約20名、全7回、3週間毎という周期でひとり1作ずつ発表します。毎回テーマとするお菓子が変わるのですが、第3回のお題は「クッキー」でして、去る5/15に発表しました... 続きを読む
  •  日没と共に降り出した雪は夜更けを待たずに積もり始めた。しんしんと降り続く雪は、ただでさえ閑静な田舎町をさらなる静寂に塗り込めていく。 凍てつく夜に好んで外出する住人はほとんどいない。路面の雪には靴跡ひとつなく、街路灯の光を反射して白く輝いていた。 このあたりは山脈の稜線を間近に望むほどの田舎町。まばらな街灯と少ない民家の窓から漏れる光、そしてかろうじて一軒だけ営業しているコンビニの看板――それら以... 続きを読む
  •  俊樹の運転する車の助手席で、花蓮は俯いて一言も話さない。 店長に鍵を返してから五分ほど経つ頃、ようやくぼそりと話し始めた。「なんか、ごめん。いい歳して雷を恐がったりして」「そんなこと気にする必要ないって。さっきのは俺だって恐かった」 ……むしろ嬉しくてドキドキしたよ。続けようとした言葉を声に出せず、出しかけたくしゃみが途中で止まったようなもどかしさに歯がみした俊樹は、(今まで女の子とつきあった経験... 続きを読む
  •  車に乗ってからしばらく、誰も何もしゃべらなかった。それというのも、慌てすぎてハンドル操作を誤り、雪道で立ち往生する連中が後を絶たなかったからだ。 そんな中、ジョニーは神がかったハンドル操作で先を走る車の脇をすり抜け、あっという間に他の車がほとんどいない通りまで走破してしまった。 後部座席で肝を冷やす俊樹たちを尻目に、マリーは平然とカーラジオのスイッチを入れる。顔を後ろに向け、話しかけてきた。「ち... 続きを読む
  •  飛び散る汗がスポットライトを反射して輝く。フォグに包まれたステージ上でジョニーが身体を折り曲げる。自らかき鳴らすギターの音色は本格的だ。 演奏しているのはどうやらオリジナルだが、雰囲気は衣裳同様八〇年代の曲調だ。まさに――。「シャウトが炸裂する……という表現がピッタリだな。古いけど、古くさくはない」 爆音とも呼べる演奏の中、俊樹の呟きは隣にいる花蓮の耳にも届かない。 いつの間にかジョニーの隣に寄り添... 続きを読む
  •  飛び散る汗がスポットライトを反射して輝く。フォグに包まれたステージ上で俊樹が身体を折り曲げる。 ジョニーがかき鳴らすギターの音色に乗り、背を合わせた花蓮とマリーが高い声を張り上げる。(ありがとう、地球人。すでに敵の七割以上を掃討した) 頭の中に直接響く声。「あれ、俺たち撃たれたんじゃなかったっけ……」 熱唱していた曲が終わったタイミングで俊樹は周囲を見回す。ジョニーのライブハウスの中だ。「……!」 ... 続きを読む

いき♂

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