自作短編/長編小説を発表するブログです。たまに日本語のことを少しだけ考えてみたり、日記を書いたりします。

スレッジ・チェイサー (23) 

( 2008/07/12 00:02 ) Category スレッジ・チェイサー | TB(0) | CM(4)

 ――みんな、無事でいろ!
「デジル?」
 目を開けた。
「あ? やば! 第三陣だ!」
 最後の1体となった《パペット》が、空中でスレッジを支えてくれていた。
「とうとう俺とお前だけか。っしゃ! 1発でも多く! 行くぜ」
 その時、はるか上空で3発のミサイルが爆発した。
「あの光……。荷電粒子砲か! やってくれるぜ、デジル」
 《パペット》が巨大な虹色の光球を発生させた。
「すげ。特別製か、お前は」
 そうではなかった。地上で爆発したジェネレーターから漏れ出た反重力フィールドが、急速にネオ・ジップ北部一帯の反重力システムを回復させつつあった。
 それに伴うフィールドの乱れが、一時的に《パペット》の性能を増大させたのだ。
 《パペット》は、2発のミサイルを同時に受け止めた。
「よーし、俺も! うおおお!!」
 スレッジも巨大な光球を発生させる。2発同時に受け止めた。
 さすがに1発だけの時とは違う。スレッジの光球の外側に、爆発のエネルギーが少し漏れた。
 そこに、もう1発落ちてきた。
「なろぉ! 3発くらい、まとめて面倒見てやるぜっ!!」
 予想を上回る閃光と轟音の中、再びスレッジの気が遠くなる。
 スレッジは、破片も残さず爆発炎上した《パペット》に、霞む視線を走らせた。
「ありがとな《パペット》。残り2発……。くそ……」
 気絶するものか。その思いもむなしく、スレッジの身体は落下を始める。しかし今度こそ、彼を支える《パペット》は1体もいない。

 アルファ5は上空を見上げて歯がみした。
「我々は、ただ見ているしかできないのかっ! 彼ひとりに全て任せて!」
 その時、目の前の《アースシェイカー》が膝をつき、倒れ込んだ。
「少尉! アルファ5! 反重力システムが回復しています!」
 先ほど防御フィールドを投擲した兵士がアルファ5に報告した。
「! 彼を救うぞ!」
 アルファ5は自分の車の反重力システムを起動し、スレッジめがけて上空へ飛び上がった。
「いいか。彼の真下でホバリングし、上下反転する。反重力フィールドを彼に照射し、受け止めるぞ」
「しかし、下手をすると我々も彼も地上に激突します」
「他に方法はない!」
 言われた通りに操縦する兵士の視界に、地上に落ちるミサイルが見えた。
 1発は《アースシェイカー》が格納されていた場所に、もう1発は座標0・0・0に。非常に近い場所だ。
「……?」
 1発分の爆発でしかないように感じたのは気のせいか。
「照射!」
 アルファ5が号令した。
 兵士がスイッチを押すと、車の屋根は見る間に地表に吸い込まれそうな勢いで落ちていく。
「だ、だめか」
 地上への激突を覚悟した。しかし。
「……?」
 車は空中に静止している。

「助かったぜ」
 窓から覗き込むスレッジと目が合って、アルファ5は思わず敬礼した。
「いえ。自分たちこそ、助けに来たつもりが逆に助けていただきました」
 事実、地上めがけてわざと加速したような格好となってしまった車を、フィールドの力で静止させたのはスレッジなのだ。
「あんたらが反重力フィールドを浴びせてくれなかったら、俺は気絶したままだったぜ」
 そう言ってスレッジは、今ミサイルが落ちた場所を振り向く。
「うわ!」
 その視線を遮るように、恰幅の良い中年が空を泳いでくる。
「ど、どけっ! こっちは急に曲がれないんだっ!」
「ペイジ!」
 再び上下反転し、車の床を地上に向けたアルファ5は、拳銃でペイジ中佐の反重力グライダーを狙撃した。
「ばか、やめっ! そこはフィールドの外に剥き出しなんだぞ!」
 慌てる中佐を無視して発砲。
 2発、3発。
 アルファ5の銃弾がペイジ中佐のグライダーに命中した。
「おちるー!」
 ペイジ中佐の醜態を見てにやりと笑ったスレッジは、両手で作ったフィールドの塊をペイジ中佐に投げつけた。
 ペイジ中佐の身体が静止するのを見て、アルファ5が言った。
「優しいんですね、スレッジさん」
「そうかい?」
 スレッジが片手を真上に上げると、ペイジ中佐の身体が回転し始めた。
「わ、わ、くそぉ!」
 反重力グライダーの出力を最高に設定したペイジ中佐だったが、グライダーが発光するだけで回転を止めることが出来ない。
 やがて、発光して回転したまま上空へと飛び上がっていく。
「は、は……」
 内心でつい今し方の発言を取り消すアルファ5だった。

 14キロ離れた《ポメラニアン》の中で、モニタにかじりついていたデジルは発光体を確認した。
 ミサイルにしては少し温度が低いので、光学照準装置に付属の画像解析をかける。
 金属の細い管を確認。武器検索――指向性散弾。
「地雷を投げるとは変わっているが……、撃ち落としてやる!」
 照準――ファイヤー!
 目標消滅。

*      *      *


「おー。いい腕してんじゃん、デジル」
 再び荷電粒子砲の光を見届けたスレッジは、座標0・0・0へと向かう。
 飛び去っていくスレッジを、中央情報局と陸軍情報部の両軍兵士たちは敬礼をして見送った。

「ミリィ、ミリィ! 無事だよな?」
 地上に到着したスレッジは、ぼろぼろになった装甲車の中で気絶している男女を見た。
「おい……、ミリィ!」
 カナと、彼女に肩を借りて上体を起こしているマーク以外、起きている者はいない。
 だが、起きているふたりにもおよそ表情というものがない。
「なんだよ」
 認めない。俺が無事なのに。
 ミリィ。いた。横になっている。
 手を触れる。頬をなでる。
「体温が……」
 思い出した。フィールドで身を包んだままだ。これじゃ体温を感じるわけがない。
 フィールドを解く。
 もう一度触れようとした、その手を――
「スレーッジ!」
 その手をすり抜けるようにして飛び起きたミリィは、スレッジの胸に飛び込んできた。
 続いて、ゲイリー、ユキ、マーチンの3人が起きあがる。
「悪い冗談はよせ! この、お子様が……」
「あれ? スレッジ泣いてる? うれしい♪」
 ミリィのぬくもりを心地良く感じたスレッジは、最早ミリィのいたずらを叱る気にはなれなかった。
 ――子どもなのは俺の方か。完敗だ、くそ。

「よーお、スレッジ! お疲れさん♪」
「お、3万ローエンが来た」
 スービィはスレッジの肩に手を置き、低い声で言った。
「ミリィのことはお前さんに任せるが、最後まで責任をとるんだぞ」
「は? 何言って――」
「ミリィは俺の姪。まあ養子だから俺の子だと言ってもいいがな。大事な子だ。3万ローエン相当の、な♪」
 ぽかんとするスレッジ。
「スービィてめえ!」
 叫びながら“まあいいか”と思ってしまう自分に、先ほどとは別種の敗北感を感じるスレッジだった。
 スービィはマークに向かって言った。
「マーク。この先、お前さんにも働いてもらうからな」
「だけどぼくは、あなたたちの邪魔をしました。手足もこの通り、もう動きませんし」
「だけどはなし。お前さんも俺の甥だ。伯父の言うことを聞け」
 マークの脳裏に、赤毛の双子を抱き上げる上等なスーツを着た人物の映像が甦る。スービィの本質に触れたような気がしたマークは、はにかんで小さく返事をした。
「……はい」
 そこでちらりと後ろを振り向き、やや意地悪そうな笑みを口端に張り付けたスービィが付け加えた。
「手足のことなら心配するな。あっちの目付きの悪いお兄さんが、金より女の子を選んだんでな。3万ローエンもあれば薬無しで両手と両足を動くようにしてやれるぜ」
「てめえ、マジで腹立つ! 人をロリコンみたいに」
 喚くスレッジの腕に両腕を絡めたミリィが、彼を見上げる。
「ん、違うの? でも、お金じゃなくってそこに突っ込むあたりがスレッジらしくて好き♪」
 口に手を当てくすくす笑うカナのとなりで、ゲイリーは腹を捩らせ豪快に笑っている。
 スレッジは口をぱくぱくさせたが、言い返す気力を失って嘆息した。

 夕闇迫るネオ・ジップの空は、激戦の名残を感じさせることなくからりと晴れ渡っていた。

〜「スレッジ・チェイサー」 完〜



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[ 2008/07/13 11:06 ]
了解です。
サイトを覗いたから知ってましたけど。。。
次の機会には、またよろしくお願いしますね♪
[ 2008/07/14 12:30 ]
細部に渡って、確認するように読みましたが…
やはり書きたくても私には書けないという事がはっきりと判りました(笑)
いやすごいですよ。
参考資料がどれだけあったのか、ちょっと気になりました。
私だったら、まず10冊は必要ですねw
いやはや、お疲れ様でした!
感激のポチさせていただきます♪
[ 2008/07/14 23:58 ]
> 細部に渡って、確認するように読みましたが…
うおお、嬉し恥ずかしぃっっ!!☆
いえ、ありがとうございます!

> 私には書けない
いやいや、そんなことはございません☆ 絶対に。

> 参考資料がどれだけあったのか、
うーん。
武器に関しては、SFちっくなものを登場させるためにWEB上の情報をちらっと漁りましたが……。
あとは脳内の妄想を適当に文章にしただけなので。。。
きっと、私が考えてる以上にあちこち穴だらけだとは思いますが(^^;;

> 感激のポチさせていただきます♪
大感謝でございます!
[ 2008/07/15 12:14 ]
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