蒲公英 ~癒しと生命力の花~

日記ブログ。たまに短編小説を発表。長編小説(別サイト)連載時は更新通知ブログと化す。

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怪盗ラヴィ 

( 2008/11/13 03:56 ) Category 短編/お題 | CM(2)

予定のひとつめ、うさこさんへの1000hitキリ番のお礼にかえて、うさこさんが執筆されている作品のオマージュを発表させていただきます(1話完結)
ラヴィくんを主人公とした「翼」シリーズに最上級の敬意を捧げます。

追記に本編を置いてあります。

ああああ。まだまだだ、私……orz




『怪盗ラヴィ』


 赤色の線が闇夜を裂く。
 紙を破るような音に遅れて熱い空気が鼻先をかする。それは、鏃に火をつけて射かける火矢。
「っ……!」
 少年は無言で飛び退る。
 彼の動きに合わせ、年格好に不似合いなインバネスコートの裾が風になびく。
 薄茶色の髪が風に揺れ、しっかりと両足で地面を踏みしめた。紅顔の美少年。鮮やかな翡翠を思わせる双眸は、闇を射抜くほど強烈な光を宿す。

「ジィン! 防御」
 闇の中、彼以外の人影が見えない。だが、そばに誰かが居るのか、少年は命令を発した。
《遅えよ! もうやってる!》
 少年にしか聞こえない声がいらえを返す。主にしかその姿を見せない精霊――ジィンの声。ただし、とても主に対するものとは思えない口調だ。
 ジィンが炎の壁を具現化させる。壁は飛来する火矢をことごとく受け止め、地面に叩き落とした。
《けっ。相手はただのニンゲンか。ナンだこのチンケな武器は》
 余裕を見せて嘲笑する精霊は、少年よりもずっと小さな――手に収まる程度の体躯である。まん丸で、オレンジ色のふわふわした物体。そして――
「やたら目付きが悪い」
《うるせえ、馬鹿ラヴィ! 緊張感がねーんだよお前は!》
 ラヴィと呼ばれた少年は嘆息とともに苦笑を漏らす。苦笑とは言え柔らかで上品な笑みであった。
「ジィンに言われたくはないね」
 複数の足音がラヴィとジィンを取り囲む。

「観念しろ怪盗め! もう逃げられんぞ」
 叫ぶ男が手に持つ松明がラヴィを照らす。彼を取り囲んだのはいずれも屈強な男たち。手に手に剣や弓を持ち、油断無く身構えている。その数は十数人ほど。
 対するラヴィは圧倒的に不利な状況もどこ吹く風といった風体だ。武器ひとつ持たず、無邪気に微笑み自然体で立っている。
 取り囲む男たちのうちの一人が剣を手につかつかと歩み寄ってきた。浅紫の瞳に黄色の肌、鍛えられた屈強な筋肉を持つ偉丈夫だ。
「ど、どこに行った!? 姿が見えんぞ。この名探偵クレイド様に恐れをなして逃げ去ったかっ」
 威圧されると思いきや、クレイドと名乗った男は突然うわずった声をあげる。ラヴィは拍子抜けした。
「は? 僕、ここに居ますけど」
 クレイドはゆっくりと視線を下げていき、ラヴィを認めるとぴたりと止めた。蔑む口調で告げる。
「怪盗っていうからどんな大男かと思っていたんだがな。なんだ、こんなチビだったのか」
 ぷちっ。
《あーあ、言っちまった》
「だれがチビだ、ごらぁー!!」
 ラヴィは激昂した。
《へーへ。やりゃいいんだろ》
 ジィンの両眼が赤く光る。実は、ラヴィは全く興奮などしていない。それはラヴィからジィンへの合図だった。

 唐突に膨れ上がる光芒。
 慌てて目を覆う男たちを、次の瞬間さらに轟音が襲った。鼓膜を震わす大音響。束の間、男たちの聴覚が麻痺した。
「あれ?」
 爆発を覚悟した男たちは、自分たちが五体満足であることに気づき、安堵する前に訝しんだ。
「光と音だけだ。してやられたぜ」
 クレイドが呟く。彼は夜空を見上げている。その視線の先を他の男たちも追った。
 宙高く舞う紅蓮の大鳥。気高き畏焔を纏い、深紅にして王の風貌を持つ──
「サ、サラマンダー!? 精霊使いなのかっ!」
 爆発と共に己の真の姿を具現化したジィン。今、彼の巨体は地上に居並ぶ男たちにもはっきりと見えている。翼を広げた怪鳥サラマンダーの威容だ。
「ごきげんよう、名探偵クレイドさん。“蒼穹の涙”はいただいていくよ」
 ジィンにまたがり、ラヴィが高らかに宣言する。掲げた手の中で、大きな青い宝石がジィンの発する赤い光を反射していた。
 射かける火矢のうち、数本がジィンの体に命中する。しかしジィンの皮膚には傷ひとつ付けられない。
 クレイドが射手に向かって呟いた。
「やめとけ。炎の精霊に火矢など無意味だ」
 むなしく矢を射る射手の横で、手持ち無沙汰に剣を携えた別の男がクレイドに話しかける。
「どうするんですかあ。盗られちゃったじゃないですかあっ」
 戦意を喪失し、完全に気が抜けている。クレイドは男を鋭い眼光で睨め付け――、しかしすぐに笑顔を向けた。
「だれがあんなガキに高価な宝石を持たせてやるものか」
「え? じゃあ」
 クレイドがもったいぶって懐から何かを取り出す。その手の中には先ほどラヴィが持っていたものと同じ大きさの青い宝石。
「こっちが本物。依頼は怪盗を捕まえることじゃなく、宝石を守ることだ。これで報酬ゲットだな」
 そう言ってクレイドは豪快に笑った。



 意気揚々と依頼主である貴族ラフォレア邸に引き上げたクレイドは、早速当主に報告をした。
「守りきったぜ。報酬をもらおうか」
 黒スーツの執事、セリムがクレイドに咎める視線を向けた。
「クレイド様、お若いとは言えサラ様はラフォレア家の当主様であらせられます。失礼な言動は――」
「よい、セリム。クレイド殿、まずは礼を言う。“蒼穹の涙”を見せよ」
 執事の言葉を遮ったのは絹のように細い髪の女性。完璧な美貌は人であることを疑いたくなるほどだ。
「あわてなさんな。この俺が大事に懐に入れて持ち歩いてたんだぜ。怪盗ラヴィとやらも、まさか本物が俺の懐にあるとは気付かなかったようだ」
 言いながらクレイドは懐に手を入れがさごそと宝石を探る。やがて探し当てた手が服に引っかかったのか、なかなか出てこない。クレイドは照れ隠しに話題を探した。
「しかし、“蒼穹の涙”とはね。宝石の名前というより、酒の名前みたいじゃねえか」
「ふ。クレイド殿はいけるクチであろう。この後、一献つきあわぬか?」
「サラ様!」
 セリムの制止など聞きもせず、サラはクレイドに嫣然と笑いかけた。
「あんたみたいな美人と飲めるならいつでも大歓迎さ。……だが俺は庶民だ。堅っ苦しい酒の席なら遠慮するぜ」
「案ずるな、無礼講だ。それに貴族は王族ではない。私とて堅いのが苦手なのは貴殿と同じ」
 ようやくクレイドの手が懐から抜けた。

「んなっ!」
 セリムの奇声。クレイドは執事に訝る視線を向け、次いで自分の手に視線を戻した。
「のわあっ!!」
 びよよーん。
 握った拳の上下から、ばねがとびだしていた。それぞれの先端には宝石と同じ大きさの、舌を出した顔が描かれたボールがついている。ボールに巻き付いていたのだろうか、ごみのような紙切れが一枚、床に落ちた。
「……んのクソガキぃ!」
 クレイドの顔が、みるみる朱に染まった。

「くそっ!」
 クレイドが手の中のおもちゃを思い切り床に叩きつけようとすると、目の前を一陣の風が通りすぎた。
 セリムがクレイドのすぐ目の前で飛び込み前転を披露したのだ。
「な?」
 立ち上がったセリムの手の中にはクレイドが叩きつけようとしたばねのおもちゃが収まっている。
「滅多なことをするものではありませんぞ、クレイド様」
「何言ってる?」
 ふたりの会話に、サラの声が割り込む。
「く」
 クレイドははっとしてサラに向き直った。
「すまないお嬢さん。まんまと怪盗にしてやられた。俺には高価な宝石を弁償する財力がない。打ち首にでもなんでもするがいい。だがその前に、もう一度だけチャンスをくれ。あのガキをとっちめ――」
「ははははは!」
 クレイドの言葉は、愉快そうに笑うサラの声に掻き消された。
「酒だ、酒。いやー、愉快愉快」
 サラの真意がわからず、クレイドは物問いたげにセリムに視線を向ける。
 クレイドは、柔らかな笑みを湛えるセリムと目が合った。
「よいのです、クレイド様。こちらが、本物の“蒼穹の涙”でございます」
「……」
 にやりと笑うクレイドの額には青筋が立っていた。
 ――こいつら、最初から俺をからかうためだけに……。
「ふははは……。お嬢さん。あんたまさかラヴィと……」
「気付いたか。さすがは名探偵」
 しれっと答えるサラ。
「床に落ちた紙切れを拾うがよい、クレイド殿。主様からのメッセージだ」

“本編ではいつも可愛がってくれてありがと、師匠♪ ささやかないたずらのお詫びに、極上の美人とお酒を楽しんでね。不肖の弟子より”

 それがキーワード。クレイドは完全に夢から覚めた。
 サラと一緒に酒を飲みたいと言ったのは確かにクレイドだ。
 ――だからって、誰が催眠術をかけろと言ったか。
「あんの馬鹿弟子め。火に油を注ぐとはこのことだ。……ふっ、まあいい、せっかくの酒宴は存分に楽しませてもらう。だがその後は……。覚えてろ。ぐふふふふふ」
 クレイドはサラを見ながら、“手出しできない女など、絵に描いた餅だ”などと胸中に呟き嘆息を漏らすのだった。
「?」
 サラはサラで、貴族然とした態度はそのまま、クレイドに嫣然と笑いかけていた。



 同じ頃、空の上。
「気のせいかな、ジィン。なんか、背中がぞくぞくするんだけど」
《鍛え方が足りねーんだ、馬鹿ラヴィは。風邪ひきそうなら燃やしてやるぞ》
「……遠慮しとく」
 しばらく無言で飛行を続ける。
「ねえジィン」
《ナンだ》
「師匠、きっと喜んでるよね♪」
《そんなこと俺が知るか》
 一抹の不安を胸に抱き、“怪盗ラヴィ”は夜空のかなたへと飛び去っていった。


~「怪盗ラヴィ」 完~

▼追記(18歳未満閲覧危険……嘘ですよ♪)▼
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こんにちはwこの前っていうか結構前ですが、コメントありがとうございました。時間がなくてなかなか訪問できず、訪問してもコメントを残せないという状況が続いてまして……。なんとかコメントできました((ぁ
時間がないので短編しか読めていないのですが、長編も読もうと思っていますのでw
では、長々と駄文を失礼いたしました。
[ 2009/02/21 13:04 ] [ 編集 ]
いえいえ、読んでいただけるだけでも嬉しいことです^^
ごゆっくり、ご自分のペースで楽しんでいただければ幸いです。
[ 2009/02/21 22:32 ] [ 編集 ]
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