蒲公英 ~癒しと生命力の花~

日記ブログ。たまに短編小説を発表。長編小説(別サイト)連載時は更新通知ブログと化す。

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【キリリク】夕映えと日焼けの頃 

( 2009/03/04 00:04 ) Category 短編/お題 | CM(15)

当ブログ10000ヒット記念。
お待たせしました m(_ _)m
愛音さんリクエストの短篇です。
愛音さんからいただいたお題は、愛音さんを主人公にしたせつない学園恋愛ものです。
学園ものなのに、学校そのものの描写がほとんどないという(^^;

こ、こんなんで納得してもらえるんだろうか(どきどき)
追記から、どうぞっ。

夕映えと日焼けの頃


 初夏の夕映えが愛音の白い制服を茜色に染める。
 現在どの部活にも所属していない愛音が、この時間に帰宅することは珍しい。
 もうすぐ夏休みが来るこの季節、日が長くなったこともあり、下校途中だった愛音は少し本屋に長居してしまったのだ。
 結局雑誌と文庫本を一冊ずつ買って、家までの残り半分の道のりを歩く彼女に、後ろから声がかけられた。
「珍しいな。愛音がこの時間に下校だなんて」
 クラスメートの男子だ。クラスで唯一のボート部員である彼は、クラスメートたちの中で一足早く真っ黒に日焼けしていた。
「修治。今日部活はどうしたの」
 思わず高鳴る動悸。愛音は修治に見えないよう小さく深呼吸すると、修治と並んで歩き始めた。
 修治とは中学も同じであり、住んでいる場所は近い。帰る方向が同じなのだ。
「今年は一年がたくさん入部したんで、艇庫に入りきらないのさ。今週は出艇練習と陸上練習、交替なんだ」
「そうなんだ。ボートって、たくさんの人数で漕ぐんでしょ」
「高校は、四人漕ぎと二人漕ぎと一人漕ぎの三種。四人漕ぎの艇には操舵手(コックス)も乗るから総勢五人だ。俺は孤独なシングルスカル」
「あはは。それって慰めるところ?」
 愛音のツッコミに、修治は後頭部をかいて「流してくれ」と苦笑混じりに言った。
「そういえば修治この前、八人乗りの競技もあるって言ってなかったっけ」
 この時、修治の表情が微妙に変化するのを愛音は見逃さなかった。
 何かまずいことを言ってしまったのだろうか。愛音が心配していると、今までと変わらない口調で修治が言った。
「よく覚えてるな。エイトは大学の花形さ。俺は大学でエイトに乗りたかったんだが」
 語尾に含む物を感じた愛音は話題を変えようとした。
「あっごめん、あたし変なこと聞いちゃったかな。ところで――」
「あれ、気を遣わせちゃったか……。何でもないよ、ただ、大学ではボート以外のことに力を入れたくなったんだ」
「ああ、そうだよね。一つのことに打ち込むのもいいけど、今のうちにしかやれないことだってあるもんね」
 修治は立ち止まり、珍しい物でも見るような目で愛音を見た。
「な……なによ」
「いや、なんかそういう言葉って、親や教師から聞くもんだと思ってたんだがな。まさか同級生から聞くとは」
「悪かったですね、オバサンで」
「ははは、いや、でもありがとう。愛音にそう言ってもらえると、ちょっと気が楽になった」
 再び歩き出した修治は、そこで初めて愛音が本屋の袋を抱えていることに気付いた。
「ああ、本屋寄ってたんだな。何買ったんだ」
 愛音がタイトルと作者名を告げると、意外にも修治は知っていたようだ。
「ああ、そう言えばこないだその人の作品が映画化されていたね」
「それで知ってたのね。読んでみる?」
「恋愛小説だろ。……遠慮しとく」
 その返事は、その年頃の男の子としてはごく自然の反応であろう。愛音は少しだけ残念に思った。

 そんな愛音の気分を知ってか知らずか、修治はまた部活の話題に戻してしまう。
「ところで来週末、一学期最後の部活の試合があるんだけどさ。弁当要るのに親いねえの」
 ――あたし、作ったげよか?
 即答したかった愛音だが、言葉に出しては「あら、それは大変ね」と言ってしまった。
「そうでもないさ。彼女に作ってもらうから」
 一瞬、言葉を失う愛音。辛うじて平静を装い、そのままのペースで歩き続ける。
「彼女、いるんだ。……そうだよね」
 何故、確かめなかったのだろう。いつ、修治に彼女ができたのだろう。愛音は告白さえしていない相手に対し、奇妙な喪失感を感じながら適当に相槌を打った。
「なんて、ね。一度言ってみたかった。しかし残念ながら修治君、年齢と彼女いない歴が一致した冴えない記録を更新中であります」
 心の底からほっとした愛音。今度は顔に出てしまったかも知れない。
「じゃあさ、お弁当どうするの」
「コンビニ弁当でも買うさ。手っ取り早いし」
「よかったら、あたし作ってあげるよ。ボートの試合、一度見てみたいし」
 またしても立ち止まった修治。
「えっと……本気?」
「うん」
 一瞬俯く修治。愛音はびっくりしたが、修治が小さくガッツポーズを作っていることに気付いて微笑んだ。
 顔をあげた修治は嬉しそうに笑っていたが、すぐ何かに気付いたような顔をして言ってきた。
「あ、でも俺なんかの彼女だと誤解されたら迷惑だろ? ノリで言っちゃって引っ込みがつかないんだったら気の毒だから、無理しなくていいんだぜ」
 人間、高二まで彼女ができないと、こうも慎重になるものなのか。愛音は苦笑しながら言った。
「コンビニ弁当じゃ寂しいじゃない。あたしに任せてよ」
「ありがとう! めっちゃくちゃ嬉しいよ」

 試合はインターハイなどとは違い、その日限りの大会であり、一般の部の合間にオマケのように高校の部があるといった印象の大会だが、出艇する高校はどこも真剣だった。
 結局試合は惨敗だった。舵手つきクォドルプル、ダブルスカル、そして修治のシングルスカルと、いずれも予選落ち。敗者復活戦に賭けるしかない状況となった。
「修治。彼女の前でいいとこ見せられないなんて最低だな」
「彼女じゃないって! ただちょっと同情して弁当作ってくれただけ!」
 むきになっている修治をちょっとかわいいと思いつつ、愛音は彼の鈍感さに内心ややあきれていた。
 チームメイトたちは愛音には優しく、修治には顔を合わせるたびにからかった。修治が出艇準備をしている時や試合中は、手の空いているクルーが愛音のところに寄ってきては彼のたわいもない悪口やら些細な秘密の暴露やらをしてくれたので、愛音は飽きなかった。
 試合ではいい結果が出ないまま、あっという間に閉会時間が近付いてくる。とうとう、修治たちの高校は敗者復活戦でもどのクルーも勝ち上がることができなかった。
 さすがに全員敗者復活戦敗退という同じ立場だからか、帰る頃になるともう修治をからかう者はいなかった。
 艇の運搬は業者が行い、艇庫への入庫立ち会いは顧問と部長、副部長がいれば充分なので、他の者は現地解散である。
 試合後、着替えて反省会が終わるまでの間、愛音はずっと待っていた。
 もうすっかり夕暮れ時。
「お疲れさま」
「ごめんな。弁当まで作ってもらった上に、貴重な休みを一日潰させたのに無様な試合を見せちゃって。退屈だったろ」
 愛音は首を振った。
「ううん。面白かったよ。思ってたより断然早くて、人数の多いボートは掛け声とかも独特で」
 全力を出し切って、それでも負けてしまって。疲れているはずなのに、ちゃんと気遣ってくれる修治。
 今日一日で、さらに日焼けの色を濃くした彼の顔。その顔を眩しく感じるのは、夕映えが照り映えているせいだろうか。
「優しいなあ。じゃ、俺が日本を離れる前に、何かお返ししないとな」
「お返しなんて……え」
 愛音は耳を疑った。
「日本を……離れる?」
「親父の仕事の都合でね。夏休み中に引っ越して、オーストラリアに永住するんだ。つい二週間前までは、俺が高校卒業するまではこっちに……、とかいろいろと話し合ってたんだけど」
 オーストラリア。永住。他の言葉はまともに愛音の耳に入ってこない。
「英語をマトモにしゃべれるようにならないと、向こうで友だち作るにも苦労するからな。どうせ住むなら、早いうちに向こうの環境と英語に慣れないと。向こうに行ってからも、今日のお礼とは別に、手紙書くよ。そのぐらい今日は嬉しかったんだ。……あ、愛音が迷惑なら手紙はやめとくけど」
 思わず伏せてしまった顔を上げ、愛音は無理矢理微笑んだ。
「……ううん。迷惑じゃないから書いてね、手紙」
 ちゃんと微笑むことができただろうか。夕陽を背にして立っていたので、逆光であまり表情を見られなければいい、と愛音は思った。

 それから次の夏までの間、愛音は修治から三通のエアメールを受け取ったが、それっきり途絶えてしまった。
 愛音は自分の部屋でエアメールを封筒から出さずに眺めていたが、机の引き出しにしまった。しばらく引き出しを開けっ放しにしていたが、やがて静かに閉める。
 高校生にもなって、不器用で鈍感な男の子。オーストラリアでは、うまくやっているのかな。
 ――不器用なのはあたしも同じだけど。
 机の上に置いた写真。金髪の友だちと並んで、夕焼けを背景にして映っている修治。相変わらず真っ黒に日焼けしていた。
▼追記(18歳未満閲覧危険……嘘ですよ♪)▼
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
[ 2009/03/04 03:14 ] [ 編集 ]
いつも応援ありがとうございます(*'ー'*)

最近、お言葉に甘えちゃっててごめんさい(;´▽`lllA``
今日はホノボノと読ませていただきました~♪
私の青春。。。。(ー。ー)フゥ 

d(-_^)ポチっと凹凸応援です!!
[ 2009/03/04 13:13 ] [ 編集 ]
まだ自分のブログのレスも終わってない状態ですが
私の強引なリク作品が出来上がったと聞いて
いてもたってもいられずにさっそく来ちゃいましたw

ボートについて全然知らなかったのですが
なんだかボート部の人に恋をしそうなくらい
感情移入しちゃいましたw

学園ものも恋愛系もあまり得意じゃないとおっしゃっていたのに
描写とかめちゃ上手ですね!
これからもこんな感じのお話書いて欲しいとか思います。。
勝手なコト言ってすいません(>_<)

主人公にしていただいてありがとうございます!
このお話記念にいただいてもよろしいでしょうか?('〇';)
最後めちゃせつないっすー(>_<)

色々元気なかったところに
こんな素敵なお話読ませていただいて
めっちゃ嬉しいです(*^-^)
ありがとうございました!(>_<)
[ 2009/03/05 04:41 ] [ 編集 ]
ま、いろいろあるさ^^
変わらぬおつきあいをお願いしますだ♪
[ 2009/03/05 08:47 ] [ 編集 ]
青春を感じてくれましたか。
にこにこ(^^)
[ 2009/03/05 08:48 ] [ 編集 ]
いやー、作品世界の中とは言え、愛音さんを呼び捨てにするのはドキドキでしたよ(^^;

> このお話記念にいただいてもよろしいでしょうか?

こんなんでよければどうぞもらってやってくださいm(_ _)m
[ 2009/03/05 08:49 ] [ 編集 ]
かなり読みやすいし、学生時代にこんな恋愛したかったな~とか思ってしまう内容でした(〃∇〃)

文章描く才能ある方ってうらやましいですよー(●´Д`●)
[ 2009/03/06 00:06 ] [ 編集 ]
おはようございます☆
才能。うーん。
自覚がないのですが、お褒め下さってありがとうございます♪

このお話を差し上げたところ、愛音さんには喜んでいただけたようなのでほっと胸をなで下ろしています。
[ 2009/03/06 08:47 ] [ 編集 ]
ひつじの桜子さん>>
Yahoo!ブログのゲスブでコメントいただいたあと、早速読んでくださったようですね、ありがとう~♪♪
修治に感情移入してくださったようで、男子を代表してお礼を……(笑)
[ 2009/05/19 13:43 ] [ 編集 ]
こ、これは胸キュん以外の何ものでもないのニャっ!
いき♂さんの爽やかな感性が伝わってまいりましたっ。
大学でも新しい目標に向かって、真っ直ぐに人生を漕ぎ進む
修治君の姿を想像でき、読後感最高ニャ。
私もオーストラリアに住みたーい。
[ 2009/06/25 10:27 ] [ 編集 ]
ニャ(照)
じゃ、今度えめるちゃんがキリ番踏んだらえめるちゃんを主人公にお話を書くのニャ!

どんなのがいいかなー。
そうだ、宇宙人コスプレバトル!
……それって今えめるちゃんが書いてる奴だったけw
[ 2009/06/25 12:14 ] [ 編集 ]
泣きそうになりました、せつないなあ・・・。
でも、すごく好きです。胸が締め付けられます。
[ 2010/02/07 00:47 ] [ 編集 ]
ありがとうございます。
気に入っていただけたようで嬉しいです^^
[ 2010/02/07 01:33 ] [ 編集 ]
不器用で仄かで甘いような酸っぱいような、「青春とはこいういものだ!」というお話ですねー。

お邪魔しております。

私が「ラブ」を書くともれなく「コメ」もついてきてしまうので、ちゃんと恋愛をしかも仄かで触れるような触れないようなお話を書けるのがうらやましいです。

それでは、他のお話も読ませていただきますねー(*´∇`)ノシ
[ 2010/09/04 00:31 ] [ 編集 ]
> 私が「ラブ」を書くともれなく「コメ」もついてきてしまうので、ちゃんと恋愛をしかも仄かで触れるような触れないようなお話を書けるのがうらやましいです。
相手との距離のとりかたって、高校生くらいになると上手い人とそうでない人の差が激しくなるんじゃないかと思うのです。
私なんかは果てしなく下手っぴでしたので(^^;

私は、実は今後、もっと「コメ」に挑戦したいですねw

読んでくださってありがとうございます♪
[ 2010/09/04 10:58 ] [ 編集 ]
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