蒲公英 ~癒しと生命力の花~

日記ブログ。たまに短編小説を発表。長編小説(別サイト)連載時は更新通知ブログと化す。

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真冬の白牡丹 

( 2009/12/24 00:00 ) Category 短編/お題 | CM(16)

 心地よい振動が眠気を誘う。
 ふと、振動が止まる。冷気に頬を撫でられ目を開けた。
「次か。ぎりぎり今日中だな」
 窓の外に見るともなく目を向ける。車内の灯りは、下りきった夜のとばりをこじ開けるには至らない。対向側、上りの線路がうすぼんやりと見えるだけだ。
「あ」
 白いものが視界を過ぎる。曇った窓を掌で拭いた。
 大きな牡丹雪だ。見る間に雪片が視界を埋めつくす。
「ホワイトクリスマス、か」
 ドアが閉まり、俺を乗せた電車が再び動き出した。

「昨日は言い過ぎた。……ごめん」
 俺は携帯に打ち込んだ文面を眺めたが、送信せずに破棄した。
 やっぱり、こういうことは直接言わなきゃ。
 携帯をしまい、その手で膝の上に置いた箱を撫でる。大きめのホールケーキ。俺が子どもの頃はケーキ屋でしか買えなかったが、今ではコンビニでも買える。
 彼女とは昨夜の別れ際に大喧嘩。あれからメールひとつしていない。おまけに、突然の残業で日付が変わる寸前だ。
「まったく、どうかしてる」
 この状況で、彼女が部屋で待っててくれることを期待するなんて。
 電車が駅に着いた。改札を出る人の波の一番後ろから、俺は重い足取りで帰路についた。

 開けたドアの内側から、屋外よりも寒々とした闇が俺を出迎えた。
 爪先で上がりかまちを探りつつ、手探りで電気をつける。
「ふう」
 玄関に彼女の靴はない。わかっていても、落胆のため息が漏れる。
 そろそろ、日付が変わる。
 リビングのテーブルにケーキの箱を置き、家の電話を確認する。留守番メッセージなし。
「ホールケーキなんて買うんじゃなかった」
 一人で食べきれる大きさじゃない。というか、独りで食べてもむなしいだけだ。
「風呂入って寝るか……ん?」
 風呂に意識を向け、ようやく気付いた。水の音だ。
「あちゃー、もしかして蛇口閉め忘れたか」
 今までそんな失敗をしたことはなかったが、今日はついてない日なのだ。いつかやるかも知れなかった失敗を、今日だからこそやらかしてしまったのかも。
 あわててバスルームへ。
「あっ」
 我ながら間抜けな声を漏らしたものだ。洗面所には丁寧に折り畳まれた彼女の服と靴。濡れた靴をここで乾かしていたのか。
 バスルームの扉から、彼女が首を出した。
「おかえりなさい。先にお風呂いただいてるわよ」
 昨夜の別れ際からは想像のできない、屈託のない笑顔で彼女が言う。
 湯気にあてられたのだろうか。俺の頬が温かくなってきた。
「おっ、おう。あのさ」
 視線で問いかける彼女に、俺は締まりのない顔を向けていたのに違いない。
「昨日はごめんな。……今から俺も入っていい?」

 彼女が髪を乾かしている間、俺はベランダから外を見ていた。
 窓から漏れるわずかな灯りを反射して、真冬の夜闇にしんしんと舞い踊る白牡丹。
「湯冷めしちゃうよ」
 背中が温かい。彼女の細い両腕が俺に巻き付いた。
 テレビの前に座った俺に、彼女はDVDを差し出す。俺は彼女の目を見て神妙に申し出た。
「昨日は本当に悪かった。どんなのでもつき合うよ」
「考えたんだけどさ。両方見ればいいじゃない。あなたが観たいラブロマンスと、私が観たいホラー」
(真冬にホラーかよ!)
 昨夜の言葉はぐっと呑み込む。取るに足らない喧嘩の原因。一応、自覚している。だいたい、イブの夜にDVD鑑賞だなんて、普通ありえない。
 部屋の電気を消し、ツリーのコンセントを入れる。俺たちはしばし、部屋を満たすクリスマスイブの光を満喫した。

 軽く食事をはさみながら映画を二本見終える頃、東の空は白み始めていた。
 彼女はホラーを最後まで観ることなく、俺の肩に頭を預けて寝息を立てている。俺は映画の後半、ほぼ彼女の顔ばかり見ていた。その髪を軽く撫でてみたら、まだほんのりとシャンプーの香りがする。
 窓の外がいよいよ明るくなってきた。昇り始めた朝日を浴び、ベランダに降り積もった雪が白銀に輝いているのだ。
 今日の仕事、たぶん辛いだろうな……。



メリクリ
私はクリスチャンではないので、普段通りの気分です^^
とは言っても下の子がまだ小学生なので、クリスマスっぽく過ごしたわけですがw

この作品は以前、FC2コミュニティ「きらきら」に投稿したもの。
あちらには1000文字バージョンが掲載されていますが、それこそが完全版だと思ってください。
それの編集前の奴に、さらに加筆しました。
1400文字だったものが、ほぼ1600文字に増えています。

なんとか雰囲気を壊さない程度にコミカルな要素を入れようとしたのですが、蛇足でした。
せっかく文章を増やしたにもかかわらず、どうにもコミュ版ほどには気に入った出来になりませんでした。


 ♪あー しあわーせうばーうよに 朝がー来ぅーるー マーイベーイブ♪
「MyBabe 君が眠るまで」  by シャ乱Q          
▼追記(18歳未満閲覧危険……嘘ですよ♪)▼
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こんばんは。勉強休憩ににちょっくら読ませていただきましたw
最初は重いテーマの予感さえしたものの、内容は思った以上に軽快でしたね。「クリスマスのある男女」って感じで、ひとかけらの物語。どこか素っ気無く終わるところもまた、雰囲気を壊さなくて素敵でしたw
[ 2009/12/24 00:18 ] [ 編集 ]
日常の何気ないワンシーン。
それをほんわりと暖かく気持いいいいいっ読後感で読ませるのはっ、
いき♂さんの筆力のなせるワザニャね。
にくいのう。^ゝω・^
[ 2009/12/24 00:42 ] [ 編集 ]
うみのさん>>
えめるん>>

外は寒いですからね。
少しでも暖まっていただけたのなら嬉しい限り(^^)

拍手返信
匿名さん>>
はい、たしかに人間の頭ってとっても重いです^^
メリークリスマス!
[ 2009/12/24 12:20 ] [ 編集 ]
ホワイトクリスマスのすれ違いと仲直りの情景。
何気なくさら~っと書いてあるのがいいな~。
誰からもプレゼントが期待できないので
いき♂さんからプレゼント貰ったって勝手に解釈~e-320
ではでは・・・メリークリスマス~e-420v-255e-420

[ 2009/12/24 16:37 ] [ 編集 ]
うんうん。こんなんでよかったら♪
メリ~クリスマース☆
[ 2009/12/24 18:18 ] [ 編集 ]
こんな雰囲気のお話大好きです(*^^*)
『完全版』と呼ばれるものも素敵にまとまっていて、ほわほわさせていただいてたのですが、
長くなった分、二人の思いに深みが出てて、さすがおにいさまと感嘆しました。
[ 2009/12/24 18:25 ] [ 編集 ]
同じ言葉でも、口に出す言葉と活字で伝わる言葉では受ける印象が違う。
やっぱり大切な言葉は直接ですよね。同感です。
一度タイミングが合わなくなったら、雪ダルマ式にずれていきますよね。
仲直りって出来てしまうとどうってことないのに、考えちゃう。彼女さんのさらっとした歩み寄り方が凄く素敵です。
いいなぁ
幸せな朝焼けは彼のもらったプレゼントだなと思いました。
[ 2009/12/24 18:27 ] [ 編集 ]
あっ、TさんKさんお揃いで♪

> 長くなった分、二人の思いに深みが出てて、さすがおにいさまと感嘆しました。
そう感じてもらえたなら大成功っ☆
ありがとう!

> やっぱり大切な言葉は直接ですよね。同感です。
> 一度タイミングが合わなくなったら、雪ダルマ式にずれていきますよね。

もうね、実感しまくりだよ(^^;


> 仲直りって出来てしまうとどうってことないのに、考えちゃう。彼女さんのさらっとした歩み寄り方が凄く素敵です。

男女に限らず、こういう歩み寄りが得意な人って素敵だよね☆
ちなみに私は苦手(^^;
[ 2009/12/24 18:37 ] [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[ 2009/12/24 21:59 ] [ 編集 ]
メリークリスマス^^
読んでいただけて幸せです♪
[ 2009/12/25 08:47 ] [ 編集 ]
いい話だなあ・・・

あっ、クリスマスなんだ。(深くうなづいてます)
[ 2009/12/25 22:50 ] [ 編集 ]
ありがとうございます^^

> あっ、クリスマスなんだ。(深くうなづいてます)
微妙なリアクションですねぃ(^^;
我が家には下の子のところにはサンタさん来ましたよ♪
[ 2009/12/26 08:54 ] [ 編集 ]
ロマンチック!!

聖夜の甘い香りがなんとも素敵(〃∇〃)
聖夜の夜には奇跡が起こる。
喧嘩したことなんてどうでも良くなるんだよ…ウンウン。

あんなに観たかったロマンス映画も、彼女の寝顔を前にしてみればただの映画になっちゃうしね。

また遊びに来ますね★
[ 2010/01/25 13:33 ] [ 編集 ]
はやくも2本目を読んでくださったのですね♪
感激でございます。
ありがとうございます!
[ 2010/01/25 18:53 ] [ 編集 ]
きゃあー!と思わずPCの前で叫んでしまいましたよ。
なんてすてきなCPでしょう、にやにやします。
ケーキは全部食べたのでしょうか、きっと甘いのでしょうね!
クリスマスのお話なのですね、ちゃんとイブの0時になってるところとか、細かいところまで神経がいきとどいていて素晴らしいと思います。
私個人としては、DVDの好みが「彼はラブロマンス・彼女はホラー」というのが気にいっています。意外性がさらによいスパイスになっている感じです。
[ 2010/01/27 17:51 ] [ 編集 ]
> きゃあー!と思わずPCの前で叫んでしまいましたよ。
ありがとうございます(^^)
思わずPCの前で拳をぐっと握った私です♪

とっても素敵な感想、励みになります。
花粉症や決算期の仕事量に負けないで、頑張ります!
[ 2010/01/27 18:54 ] [ 編集 ]
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