蒲公英 ~癒しと生命力の花~

日記ブログ。たまに短編小説を発表。長編小説(別サイト)連載時は更新通知ブログと化す。

スポンサーサイト 

( --/--/-- --:-- ) Category スポンサー広告 | コメント(-)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-->
Copyright © 2008-2012 いき♂@蒲公英 . All rights reserved.
コメント(-)

キミとボク 

( 2009/11/25 12:06 ) Category 短編/お題 | CM(9)

 質の悪い舗装のせいで、路面のそこかしこに窪みができている。そこに溜まった水溜まりが、まばらな波紋で揺れはじめた。秋の長雨、降ったり止んだり。
 今のボクには、そぼ降る雨に風情を感じる余裕はない。どんよりとした空模様と同じく、ただ侘びしさだけが空しく募る。
「!」
 ふと、頭上の雨音が大きくなる。雨滴が弾ける音に空を仰ぐと、鮮やかな水色が目に飛び込んだ。差し掛けられた傘が、冷たい雫を遮ってくれている。
 見覚えのある傘とよく似ているけれど、彼女のはずがない。ボクは口から飛び出しかけた名前を飲み込み、ひとつ深呼吸してから振り向いた。
「……風邪、ひいちゃいますよ」
 控え目な声と気遣わしげな笑顔。校舎を背に立つ細いシルエットに、ボクは柄にもなく野に咲く一輪の花を連想していた。

 傘のないボクを駅まで送るというキミの申し出に驚いたけど、なんとなく断り切れなかった。
 背の高いボクが傘を持ち、キミの肩が濡れないように傾けていた。
「肩、濡れちゃいますよ。先輩」
 いきなり声をかけてくる割にはおとなしい子だと思っていたが、案外はっきりと物が言えることに第一印象とのギャップを感じた。いや、そんなことよりも。
「髪が濡れないだけでも十分にありがたいよ。ところで、ごめん。初対面だと思ってた」
「ひっどーい」
 キミは笑いながら名乗ってくれたけど、やはりボクにとっては初めて聞く名前だった。
「それはそうですよ。名乗るのはこれが初めてですから」
 テニス部は人数が多く、男子部と女子部の交流は他の部活と比べても少ない。とは言え、上級生の名前が下級生に知られていることは珍しいことではあるまい。テニスの腕前で有名なら言うことはないのだが。
「県大会三位なんだから自信を持ってください。先輩は一年女子の憧れなんですよ」
 幸運の連続で勝ちを拾っただけだ。しかしボクはそれを言わず、曖昧な笑顔を返して駅で別れた。それが、キミとの出逢いだった。

 三年の夏、ボクは念願のインターハイに出場したが、緒戦であえなく敗退した。
 受験勉強に専念するようになってからも、キミとは毎日のようにメールをしている。
「すっごくがんばったね! あたしも鼻が高いよ。……県大会八位のあたしが言うのも変だけど」
 一年経った今も、キミはあの時のことを持ち出してはボクをからかう。
「今回も、あたしがなぐさめてあげるね」
 やっぱり、キミは知っていたんだね。あの時、ボクが彼女にふられたってことを。

 いよいよ受験が近付いてきた。
 窓から空を見上げると、秋の長雨がしとしとと降っている。
 人間とは勝手なもので、今年のボクはどんよりとした空模様に風情を感じている。いや、傍から見ればそんな高尚なものではないだろう。おそらく頬が緩んでいるだろうから。
 この季節の雨は、野に咲く一輪の花を思い出す。初めての相合い傘で歩いた、あの日のキミとボク。

Copyright © 2008-2012 いき♂@蒲公英 . All rights reserved.
『キミとボク』
お題おはなしありがとうございました!
即効で読ませていただきました☆
はじまりが雨の冷たさと切ない感じで、水色の傘。ふわっとその光景が浮かんできて、帰り道までは、後ろから2人を見ながら一緒に歩いているような気持ちになりました。

一年経って、先輩と後輩から近づいて、そして彼女に振られたことを知っていたキミ。
同じ雨でもラストの雨は秋を深めるためのものに思えて、きゅんっとしました。同じ部活での先輩と後輩って密かに憧れです☆

いき♂様のお話は、読んでいてほわってするので好きです。
こんなにステキなお話で答えてくださって嬉しいです。私たちのお願いしたお題が、記念作品の一つになったことも含めて。
最後にもう一度、ありがとうございました!
[ 2009/11/25 14:44 ] [ 編集 ]
青春にゃーっ!
しかも爽やかニャーッ! 
そんでもってホンワリ優しいニャァ……。あふっ。
この雰囲気。
いき♂さんならではでスニャね。むふっ。

きっと、お互いに励ましあって、厳しい受験も
しっかり乗り越えられるね。
そんなことも予想できたニャよ。
[ 2009/11/25 15:51 ] [ 編集 ]
きらりさん
読んでくださってありがとうございます!
こんな短い話でも、かなり時間をかけてしまいました……

> いき♂様のお話は、読んでいてほわってするので好きです。
勿体ないお言葉です(^^;
でも、そう感じていただけたなら良かったです☆



えめるん
> 青春にゃーっ!
をう! 青春にゃーっ!!
むふ。そこまで予想してもらえて主人公たちも幸せニャ☆

えめるんの話、もすこし待っててね♪
あ、詳細な希望とかってある?
[ 2009/11/25 17:10 ] [ 編集 ]
こんばんは、デン助です。
短編読ませていただきました。この文章力……ふつくしい。

>秋の長雨、降ったり止んだり。
特にこの部分がズバッと来ました。
うーん、イイ!
分厚いバックボーンを感じる文章でした。
ありがとうございました。
[ 2009/11/25 22:09 ] [ 編集 ]
ふつくしいですか!?
ありがとうございます^^

今回はキミとボクの年齢設定をいろいろと考えていて、下は幼稚園児から上は熟年夫婦に至るまで……
最終的に高校生に落ち着くまでに思いっきり時間がかかりました。

文章量そのものは「夕暮れのサンライズ」の半分にも満たないのに、執筆(実質的にはほぼ構想……妄想?)時間は二倍を軽く越えちゃってます(^^;
それだけに、ズバッと来る部分があったと言っていただけて、ホッとしました。
[ 2009/11/26 00:10 ] [ 編集 ]
希望といわれますと、んー。
んー……?
あ。んじゃ、お言葉に甘えて。
たのちぃのがいいかニャぁ。

でも、たとえ悲劇だったとしても、
いき♂さんの好きなように書いていただければ、
えめるは本望ですニャ。あい~。
^бωб^
[ 2009/11/26 09:14 ] [ 編集 ]
おっしw
腕によりをかけてえめるんギャグの楽しい系のお話を作る!
[ 2009/11/26 10:30 ] [ 編集 ]
いいなぁ。
あたたかくなりました。

その文章力分けてください(笑)


上手くなるコツとか教えてくれると、嬉しいです♪

[ 2009/11/28 01:51 ] [ 編集 ]
ありがとうございます^^

> 上手くなるコツとか教えてくれると、嬉しいです♪
え……私が教えて欲しいくらいなんですけど……(^^;

ところで、アルツですみません(^^;
もしかして、「まったり散歩道」の香月さんでしょうか?
違ってたらすみませんっ><;
[ 2009/11/28 09:18 ] [ 編集 ]
コメントの投稿













内緒コメント/記事と無関係なコメントはなるべくチェックを……

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。