蒲公英 ~癒しと生命力の花~

日記ブログ。たまに短編小説を発表。長編小説(別サイト)連載時は更新通知ブログと化す。

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星に願いを 

( 2009/11/27 00:15 ) Category 短編/お題 | CM(10)

 冬が近いせいだろう。満天の星々は見上げるあたしを吸い込むかのように煌めく。
 星座のことはよく知らないので、頭の中で適当につないでみた。
「オネコ座ね。ちょっとデブ猫になっちゃった。ふふっ」
 身を切る寒さの中、星座は光の尾を延ばしてお互いにしっかりつながった。清冽な滝のような光の奔流は、やがて地上へと降り注ぎ――
「は。……え? いや、なに? え、えーっ!?」

 あたしが思い描いた星座「オネコ座」が、あたしのベランダにぼてんと着地した。
「おう。呼んだか、えめる。来てやったニャ」
「…………」
「感動で声も出ニャいか。仕方ニャいニャあ」

 ……はっ。呆けている場合じゃないわ。
 なによこの茶色のデブ猫。ニヤニヤ笑っちゃってるし。
「チェシャ猫ぉ? しゃべっちゃってるし! しかもあたしの名前知ってるし!!」
「失敬ニャ。いや、高名な著作のキャラクターになぞらえてもらえたのは光栄だニャ。わがはいの名前は……」
 チェシャ猫が固まった。大量の汗がヒゲを伝い、その重みで垂れたヒゲの先端から雫が落ちる。
「なによ。あなた、もしかして名前ないんじゃないの」
「ニャい。生まれたばっかりだったのニャ。だから付けて欲しいのニャ。わがはいの生みの親はえめるなのニャ」
 未婚の母? あたし未婚の母!? というか、星空を見ながら変なお願いしたのがいけなかったんだわ。

 失敗だった。あたしが「猫飼いたいな」なんて思いながら夜空を見上げたばっかりに。お星様、お願い聞いてくれなくていいです。チェシャを連れ戻して。
 あたしがお願いの取り消しをお星様に申し入れている間に、チェシャの奴はちゃっかりとあたしの部屋に入り込んでいた。
「盗作ニャ! きちんとした名前をつけるのニャ! チェシャなんて呼ぶニャ!」
「『不思議の国のアリス』の著作権ならとうに切れているわよ。気に入らないなら余所で飼ってもらえば?」
 チェシャは再び大量の汗をかき、雫を落として床を濡らすべくヒゲをだらりと垂らす。
「もう、汚いなぁ。床に落ちた汗はきちんと拭いておいてね」
「名前、チェシャでいいからここにおいてくれニャ。……猫使いの荒い飼い主ニャ……」
 チェシャは器用に前足で雑巾を絞り、床をせっせと拭きながらつぶやく。
「しゃべるデブ猫なんて、世間に存在を知られたら即見世物にされるニャ。わがはいにはえめるのところしか居場所がないニャ」
「ついでに雑巾がけもできる猫よね。一匹で二度おいしいわね」
 チェシャの毛が逆立った。それでも大量の汗を落とすまいと、雑巾を顔面に押し当てている。そこまでされるとさすがに気の毒になってきた。
「やあね、冗談よ。床がきれいになったらお風呂にしましょ」
 ん? 何をしている時もチェシャは笑ってるように見えるから判りづらいけれど、なんか今、チェシャの目がハートマークになったような……気のせいかしら。

 空から降ってきたばかりだからなのか、チェシャの茶色の毛並みは綺麗なものだった。洗ってやっている間、チェシャは眼を細めて気持ちよさそうにしていたが、ぽつりとつぶやく。
「人間って、水着を着てお風呂に入るのニャ。変わってるニャ。わがはいとっても残念ニャ」
 あ。やっぱりこいつ期待してたな。
「がぼばっ!」
「あ、ごめん、わざと♪」
 問題ないわよね。大量に汗をかいたチェシャの顔面がきれいになるんだもの。
 あたしはシャワーを握り締め、チェシャに満面の笑顔を向けてあげた。

 ドライヤーをかけてやっていると、チェシャの瞼が眠そうに閉じていく。なによ、いい気なものね。でも、眠そうな猫ってやっぱりかわいい。あたしも眠くなってきた。
 大体乾いたかな。ドライヤーを止めると、チェシャと目が合った。
「えめる、いい奴だったからすぐに願いを聞き届けてやるニャ。わがはい、ホントはもっと居候するつもりだったんだけどニャ」
「あら、お願いだったらもう叶ったわよ。あなた、ここにいるじゃない」
 チェシャは喉を鳴らしたが、すぐに歯を見せて人間のように笑った。
「誤魔化すニャ。それは本当の願いを隠す口実ニャ」
 う。さすがに空から降ってくるだけのことはあるわね。なんか、見透かされてる。
 本当の願い……か。なんだかもう遠い過去のことで、どうでもいいことに思えてきた。
「そうね、あえて言うなら」
 チェシャは無言で先を促す。
「あの人には幸せになって欲しいな」
 チェシャは目で頷いた。どんな意味を込めて頷いたのか、わからなかったけれど――

「ん……」
 あたしは閉じていた目を開けた。どうやらソファに座ったまま眠ってしまっていたらしい。
「チェシャ? どこ?」
 チェシャの姿が見当たらない。
 いや、そもそもいなかったんだ。有り得ない。空から猫が降ってくるなんて。
「なんだ、夢か」
 床に置きっぱなしになっていたドライヤーと雑巾を片付ける。
「あれ」
 ドライヤーに引っ掛かっていたのはあたしの髪の毛? それにしてはやけに茶色っぽい。
 あたしはベランダから星空を見上げた。
 眼を細め、軽く擦って見つめ直す。
 今たしかに、オネコ座が瞬いた。


Copyright © 2008-2012 いき♂@蒲公英 . All rights reserved.
こっ!こここここれは!!
ニャんでえめるのこと、そんなによく知ってるのニャ?

いやー、面白かったし、ちょっとほろっとしちゃったし……。
デブ猫があせっかきなのも気に入ったニャッ。笑った。

あーんチェシャー、また戻っておいでよぉ~^;д・^

いき♂さーん。本当に、ありがとニャねっ。うれしいよ。
ちょっと早い、とっても素敵なクリスマスプレゼント。
もらったにゃ。
[ 2009/11/27 12:33 ] [ 編集 ]
> あーんチェシャー、また戻っておいでよぉ~^;д・^
気が向いたらまた床に汗垂らしているかも♪

> ちょっと早い、とっても素敵なクリスマスプレゼント。
> もらったにゃ。

うんうん、もらってやって。
よかったよかったw
[ 2009/11/27 12:49 ] [ 編集 ]
えめるさまとオネコのチェシャのやりとりに、ニマニマしながら和みました。(*´ω`*)
ラストでふっと優しさが降りてくるところがさすがです~☆
私(達)もオネコのチェシャに会いたい~(≧∀≦)☆
[ 2009/11/27 19:22 ] [ 編集 ]
チェシャは気まぐれだけど、会いたいと思えばいつでも会えるような気がします♪
[ 2009/11/27 19:59 ] [ 編集 ]
チェシャが肉球のついた手で雑巾を汗をかきかき搾る・・・想像しただけでにやけてしまいます~e-348
・・・きっと「あの人」は幸せでいてくれる。
なんだか気持ちが優しくなれました。
こ~ゆ~のも・・・ナイスです~e-319

[ 2009/11/28 00:40 ] [ 編集 ]
肉球で雑巾w
ちょっと無理があったね^^
> なんだか気持ちが優しくなれました。
姐さんもともと優しいから♪
ありがとです。
[ 2009/11/28 09:16 ] [ 編集 ]
お邪魔します。

心がポッとなるような温かい物語をご馳走様です☆
女性とのお風呂に期待を抱くネコ……凄く素敵です。ネコと会話が出来たら本当にこんな感じなんだろうかと笑いながら我が家の猫をまじまじと観察してしまいましたε=(>ε<)

とても楽しかったです。
また遊びに来ますね♪
[ 2010/02/10 23:11 ] [ 編集 ]
> 心がポッとなるような温かい物語をご馳走様です☆
いえいえ、お粗末様でした(^^;

> ネコと会話が出来たら本当にこんな感じなんだろうかと笑いながら我が家の猫をまじまじと観察してしまいましたε=(>ε<)
えへへ^^
案外そんな感じかも……などと想像しつつ、楽しんで書きましたw
[ 2010/02/12 09:01 ] [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
[ 2010/08/12 23:56 ] [ 編集 ]
コメントありがとうございます♪
こんな猫が実在したら私も欲しいです^^

匿名さんのところにもお邪魔しに行きますよー!
[ 2010/08/17 09:07 ] [ 編集 ]
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