蒲公英 ~癒しと生命力の花~

日記ブログ。たまに短編小説を発表。長編小説(別サイト)連載時は更新通知ブログと化す。

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What makes my heart sing? -2- 

( 2012/01/19 23:00 ) Category 短編/お題 | CM(2)

 俊樹の運転する車の助手席で、花蓮は俯いて一言も話さない。
 店長に鍵を返してから五分ほど経つ頃、ようやくぼそりと話し始めた。
「なんか、ごめん。いい歳して雷を恐がったりして」
「そんなこと気にする必要ないって。さっきのは俺だって恐かった」
 ……むしろ嬉しくてドキドキしたよ。続けようとした言葉を声に出せず、出しかけたくしゃみが途中で止まったようなもどかしさに歯がみした俊樹は、(今まで女の子とつきあった経験がないもんな)と埒もない自虐的な呟きを胸中に漏らす。
 花蓮がどんな顔をしているのか気になった俊樹は、ちらと助手席を窺った。すると――。
「なにあれっ」
 大きな目をさらに見開いて前方を指差す花蓮に促され、俊樹も前を向いた。思わず急ブレーキを踏んだ俊樹は、花蓮を大きく前傾させる愚を犯してしまう。
 気遣う俊樹を手で制し、「大丈夫大丈夫。それより外よ。UFOかも」と興奮してまくしたてる花蓮。彼女は、俊樹が車を路肩に寄せて停めるのももどかしげに路上に降りてしまった。
 あわてて彼女の背を追う俊樹の視界の中、複数の白光が舞い踊る。彼らが見上げる空で、十を超える円盤形の光が素早く不規則に移動している。ジグザグに動き回るせいで距離感がいまひとつ掴めないが、百メートルは離れているだろうか。一つずつの円盤の長径は五メートル前後、乗用車くらいだ。
 空ばかりを見上げる花蓮が車道に飛び出さないよう、俊樹は周囲を見回しながら彼女についていった。先行していた車、後続車、みな一様に路肩に停車して車を降りている。彼の視界の範囲内だけでも三人ほど、携帯電話を空に向けている者がいる。
「なんだ、あの撮影姿勢は」
 見かけた三人が三人とも、腕を一杯に伸ばしている。あんなに携帯電話を顔から離した状態で上手く撮影できるのだろうか。他人事ながら余計な心配をした俊樹が、再びUFOを見ようと夜空を仰いだその瞬間――。
「っ…………!」
 突如、強烈な閃光が居合わす人々の目を射る。真昼の陽光なみの光の奔流。ほぼ全員が手で目を覆ってその場に蹲る中、俊樹は視界の隅で確かに捉えた。

 ――雷なんかじゃない、UFOだ。奴が、撃ちやがった!

 雷鳴。閃光とほぼ同時だ。一人の例外もなく手で両耳を押さえる。
 花蓮より先に手を耳から離した俊樹は、中腰になって周囲を見回す。路上に転がる物体を見て目を見開いたが、ひとつ頭を振ると花蓮の肩に手を置いた。震える声で告げる。
「鈴木さん、車に乗るんだ。逃げるぞ」
 力一杯両耳を押さえている花蓮にはどうやら俊樹の声が聞こえていないようだ。彼女の肩を揺すり、さらに呼びかける。
「鈴木さん。……花蓮!」
「えっ」
 花蓮は顔を俊樹に向け、ようやく手を耳から離すと立ち上がった。
「今のは雷なんかじゃない。あの円盤からの攻撃だ。とにかくここから逃げよう」
 こくんとうなずいた花蓮は「何か、焦げ臭い」と呟き、周囲を見回そうとする。
「見るな」
 俊樹の制止は間に合わず、花蓮はそれを見た。音を立てて息を吸い込み、手を口に当てて震える。
 路上では人の形をした炭が三体、燻っていたのだ。
 いずれも携帯電話を操作していた人物……だろう。
「うわ、うわあぁ」
 誰かが叫んだ。
 その場の全員が、一斉に走り出す。
 俊樹も走った。花蓮の手を引いて。
 エンジン音が聞こえる。
「おい、降りろよ。俺の車だぞっ」
 俊樹の叫びがエンジン音に掻き消される。
 空噴かしの爆音を上げるのは俊樹の車だ。見知らぬ男が乗っている。夢中になって発車を止めようとする俊樹の視界に、すぐそばの歩道に倒れて手を伸ばす女性の姿が過ぎる。
「タカシ! あたしを置いてかないで」
 どうやら、恋人さえ見捨てて自分だけ助かろうという魂胆の輩らしい。頭に血が上った俊樹は声を限りに怒鳴った。
「降りろこの野郎っ。恋人を置き去りにするのか意気地なしめ」
 俊樹の叫びも空しく車は動き出す。しかし、急発進の直後にタイヤは雪上をむなしく滑り、十メートルも進まぬうちに斜めを向いた車体は対向車線へはみ出してしまった。
 耳をつんざくクラクション。花蓮の手を握ったまま、俊樹は両肩をびくりとふるわせた。
 間を置かず響き渡る無機物の悲鳴。金属の塊同士が激しくぶつかる衝突音だ。
 割れるヘッドライトとフロントガラスの破片が飛び散り、街灯や他の車のヘッドライトを浴びて夜空にきらきらと光の粒を振りまいた。
 正面衝突。対向車線を走ってきた車と俊樹の車が、フェンダーを大きくへこませて無残なスクラップとなり果てた。
 俊樹の車を奪った奴はシートベルトを着用した様子がなかった。しかも、対向車はかなりのスピードだった。エアバッグが作動したはずだが、命に関わる骨折をしたかもしれない。
 俊樹の車は走り出したばかりであり、周囲の歩行者に被害はない。自分の車が凶器となり、歩行者を巻き込む惨事につながる……という最悪の事態を免れたことが、俊樹にとってのせめてもの救いと言える。
「タカシ……。き、救急車。救急車呼ばなきゃ」
 さきほど倒れていた女性が立ち上がり、俊樹の車へと駆け寄っていく。
「もう、なんで圏外なのよっ。誰か、救急車呼んでよ……あっ」
 女性は半ばヒステリー気味に声を荒げた。駄々っ子のように手を振り回した拍子に携帯を落としてしまう。路上を滑る携帯を追って女性が手を伸ばすが、それは俊樹の車の下へと潜り込んでいく。ほとんど意味を成さない声を漏らしつつ、女性が地面に這いつくばった瞬間――。

 再び、あたりが真昼と化す。
 ほとんど反射的に、俊樹は花蓮を押し倒すようにして彼女の上に覆い被さった。
 轟く雷鳴、そして耳を聾する爆音。

「俺の車が……。俺の車の中で人が……」
 立ち上がったものの放心して呟く俊樹の腕に、花蓮がぶら下がるようにしがみついてきた。
「俊樹! とにかく今は、ここから逃げよっ」
 俊樹は花蓮に視線を合わせると、ひとつ瞬きをしてから無言で頷いた。再び自分の車に視線を戻す。視線の先――炎上する俊樹の車の脇で、携帯を落とした女性が横座りの姿勢で震えている。命に別状はなさそうだ。
 夜空を見上げる。女性には興味を示さず、UFOが別の獲物を探すかのように飛び去っていくところだった。時折、遠方で稲光が奔(はし)り雷鳴が轟く。目を懲らせば、別のUFOが地上を攻撃している様子がはっきりとわかる。
「間違いない。黒焦げになった人と言い、今の攻撃と言い……。奴ら、電源の入った携帯を攻撃しているんだ」
 根拠は甘いが、俊樹は直感に従って断言した。直感を疑う余裕は今の俊樹にはない。
「花蓮。携帯の電源、切っておくんだ」
 言うが早いか、俊樹は自分の携帯を操作して電源を切る。そして、口に手を当て周囲に呼ばわった。
「みんな、聞いてくれ。あのUFO、電源の入った携帯を攻撃している。携帯の電源を切れっ」
 ふと気付くと、周囲は悲鳴と怒号、さらにはエンジン音とクラクションの坩堝と化している。俊樹の声に耳を傾ける者はほとんどいない。
 徒労感に苛まれつつも、俊樹は花蓮の手を引いて走り出した。

(伏せろ、地球人!)

「きゃっ」
 俊樹は考えるより先に、再び花蓮を押し倒して覆い被さった。
 夜空が明滅する。次いで、雷鳴よりはずっと小さい、滝が流れるような音が聞こえてきた。
 薄目を開けた俊樹は花蓮から体を離し、夜空を見上げ――
「なにっ!?」
 大きく目を見開いて勢いよく立ち上がり、開けた口を閉じるのも忘れて見送った。UFOのひとつが機体の端から火花を散らし、機体を揺らして逃げるように飛び去っていく様子を。
 さっき警告してくれたのは誰だろう。あれは耳で聞いたのでなく、頭の中に直接響いてきたような気がする。そんなことを考えながら周囲に視線を走らせた俊樹は、ほど近い道端に黒焦げの死体がもうひとつ増えていることに気付いて息を飲んだ。
 ほぼ同時に、さきほど頭の中に響いた言葉を単語として反芻し、違和感を覚える。
「何て言った。たしか“地球人”って」
 もしかして、呼びかけてきたのはこいつだろうか。目の前で燻っている新たな黒焦げ死体……こいつが、UFOの攻撃から助けてくれた? 考えていても答は出ない。今は近くにUFOがいないのだ。とにかくこの場から少しでも遠くへ逃げよう。
 混乱する頭を無理矢理落ち着かせて意志を固めた俊樹は、再び花蓮の手を引いて走り出し……、またしてもすぐに足を止めた。
「きみたち、車盗られて困ってるだろう。よかったらオレの車で送っていくぜ」
 俊樹たちの目の前に現れた人物が、傍らに停車中のセダンの屋根に手を置いた姿勢で話しかけてきたのだ。
 常であれば、俊樹としては目も合わせず脇をすり抜けていたことだろう。何しろその人物――おそらく三十歳前後の男性――は、バンダナと黒い革ジャンという、八〇年代ロックアーティストを彷彿とさせる勘違いファッションでキメていたからである。
 だがその勘違い氏――
「オレの名は三芳礼治。ジョニーと呼んでくれ」
――ジョニーは、周囲でパニックを起こす人々とは違い、落ち着いていた。
 俊樹は花蓮と目配せし、頷き合うと即断した。
「……お願いします。助けてください」
 パワーウインドウが開く音がして、俊樹はそちらに目を向けた。開いた窓の内側から高い声がかけられる。
「ねえジョニー。誰、この人たち」
 漆黒のストレートロング。助手席に座っているのは、小学校高学年くらいの女の子だった。
「ロックなハートのお兄さんたちだぜ、マリー」
「そう」
 にこりともせずに返事をした女の子は、俊樹と花蓮には笑顔を見せた。
「鍵、開いてるわよ。どうぞ乗って」

   *   *   *



Copyright © 2008-2012 いき♂@蒲公英 . All rights reserved.
UFOですか!
しかも地上を攻撃態勢‥‥こ、これからどうなるのだろう(((( ;゚д゚)))アワワ

俊樹と花蓮‥‥ハッピーエンド、ですよね?
この流れで一体どうやって、いき♂さんは「メリークリスマス、花蓮」(あれ、彼女に言うんですよね? 違ってた?)を言わせるのか、とっても気になります~。

ゆっくり一話ずつ、お邪魔しますね♪
ではでは。
[ 2012/01/24 00:31 ] [ 編集 ]
> UFOですか!
荒唐無稽、大好きですから(^^)

> 俊樹と花蓮‥‥ハッピーエンド、ですよね?
> この流れで一体どうやって、いき♂さんは「メリークリスマス、花蓮」(あれ、彼女に言うんですよね? 違ってた?)

企画立ち上げ時の縛りとしては、
・ハッピーエンドである必要は無い。
・メリークリスマス、○○ ←○○は任意。
ということなので、必ずしも花蓮である必要も無いのです。

というか、もしよろしければ最後まで読んでいただければ(^^)
[ 2012/01/24 12:46 ] [ 編集 ]
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